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プラズマを磁場で閉じ込める原理

☆ 核融合発電 では, 超伝導磁石 で作った強力な磁場で 1億度 の水素ガスを閉じ込めます。閉じ込めるというのは,真空の容器の中で壁にぶつからないように空中に浮遊させることです。では,どうして磁石で水素ガスを閉じ込めることができるのでしょうか? ☆「鉄」が磁石にくっつくというのは誰もが知っていることです。もう一つ磁石によって力が働き,動かせるものがあります。「電気の流れ」つまり「電流」です。ちょっと難しそうな話ですが,磁石によって電流に働く力を使ったものは身の回りにたくさんあります。洗濯機,冷蔵庫,パソコンのファンに使われているモーター,テレビのブラウン管,スピーカーなどすぐ身近にあります。(分解すると磁石が入っています。) ☆ 1億度の水素ガスはプラズマ状態 と呼ばれ,電子をはぎ取られた原子核が高速で飛び回っています。原子核はプラスの電気を帯びていて,これが走ると電流となり,磁場の中で力を受けます。そして図のように磁場のなかでクルクル回り出します。そして原子核は磁場にまとわりつき,逃げていかないというわけです。はぎ取られた電子も同じように電気を帯びているので、磁場にまとわりつきます。 ☆核融合の研究では,どのような形の磁場(磁石)を作れば,上手くプラズマを磁場の中に閉じ込めておけるかが重要なテーマとなっています。そこで 大型ヘリカル装置ではねじれた形の磁石 を使って,プラズマを閉じ込める研究をしています。

ステラレータ(星の発生装置)

☆私の研究所にある「大型ヘリカル装置」は、ステラレータ(Stellarator)という名前の装置の仲間です。ステラレータは、天文学者でもある米国プリンストン大学のスピッツァー教授が1950年頃に考案しました。この名前も彼がつけたもので、Stellar-「星の」という形容詞がついた天文学者らしい命名です。なんと最初のステラレータ装置は「8の字」の形をしていたそうです。ステラレータはその後、色々な改良が加えられ、京都大学でヘリオトロン(Heliotron、helioは太陽の意)という装置が考案されました。「大型ヘリカル装置」は日本で進化を遂げた世界最大のヘリオトロン装置です。 ☆ステラレータやヘリオトロンと同じドーナツ状のプラズマを作る装置にトカマク(TOKAMAK)があります。こちらは旧ソビエトで考案され、名前もロシア語でTOK(電流)、KAMEPA(容器)、MAGNITNUE(磁気)、KATUSHKI(コイル)の頭文字からきています。これまでトカマクのほうが大きな装置が作られ、プラズマ最高温度の記録も持っています。国際協力で建設が始まろうとしているイーター(ITER)もトカマクです。トカマクで核融合反応の実証が行われ、次に作られる 核融合発電所 については、いろいろな装置の競争になるだろうと考えています。

夢の核融合反応

☆核融合反応は、軽い原子核同士を高速で(超高温状態で)衝突させて、少し重たい原子核に変換する反応です。原子核が融合するときに大きなエネルギーが発生します。 ☆温度が高くなるほど核融合反応は起こりやすくなりますが、最も起こりやすい 重水素 (記号D)と 三重水素 (記号T)の反応(D-T反応)でも温度を 1億度 にしなければなりません。最初の核融合発電で使われる反応は当然このD-T反応になります。この反応の短所は、反応によって中性子が発生し、中性子のエネルギーを熱に変換して発電しなければならないことです。 ☆さて、夢の核融合反応と言われているのは、 重水素 とヘリウム3の反応(D-3He反応)です。この反応では上記のD-T反応に比べて、中性子の発生量を数10分の1に減らすことができ、発生する水素の原子核(陽子)から直接電気をとり出すことができます。燃料のヘリウム3は、月、木星、土星にたくさんあることが知られていて、将来の宇宙時代のエネルギー源と考えられています。ところが温度は10億度(D-T反応の10倍)近くにしなければならず、プラズマの閉じ込めがかなり難しくなります。(初期のガンダムにこの反応が使われているという話を聞いたことがあります) ☆さらに究極的な夢の核融合反応が、通常の水素とホウ素の反応(p-11B反応)です。発生するのは、安定なヘリウムだけで、中性子が発生しません。ヘリウムの原子核は電気を帯びているので、これから直接電気が取り出せます。しかし、さらに超高温が必要で、磁場で閉じ込める方式では現在の技術の限界を超えています。 ☆しかし夢はいつか夢でなくなる時が来ます。それまで人類が存続できればですが。