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プラズマの周りを囲む壁の材料

核融合発電では,1億度の水素のプラズマが真空の容器の中で磁場によって空中に浮遊しています。プラズマは真空容器の壁に触れていないので、互いに無関係かというと、そうではありません。プラズマから閉じ込められなかった原子核が高速で飛び出してきて、真空容器の壁に衝突します。そして壁の材料を少量ですが弾き飛ばします。

☆真空容器の中の水素プラズマは1グラムにも満たない重さですが、ここに1%でも壁から弾き飛ばされた不純物原子が入り込むと、温度が極端に下がってしまいます。長時間プラズマを保持しなければならない核融合発電には、不都合な現象です。

☆そこで、高速粒子がぶつかっても原子核が弾き飛ばされにくいタングステンという金属が壁の材料として有力といわれています。しかしタングステンは、一度プラズマに混入すると、プラズマの温度を下げる効果が大きいという欠点もあります。壁にどのような材料を使うかは、これからの重要な研究テーマとなっています。

1億度のプラズマを閉じこめる容器

以前、太陽で核融合反応が起こっている原理を説明しましたが、全く同じことを地球上で起こすことは不可能です。太陽は水素でできているにも関わらず、あれほどの大きさと重さを持っているので、核融合反応を起こすことができています。地球上では、せいぜい大きさが20~30メートルの装置の中でプラズマを作って、核融合反応を起こします。その方法を簡単に絵に書いてみました。まずプラズマを作る容器の中の空気を抜いて真空にします。容器は空気が入ってくるような孔が開いていない金属製の真空容器です。そしてそこに薄い水素ガス(室温)を入れます。(大気圧の数10万分の1の薄さなので、ほとんど真空です)太陽との大きな違いが、燃料の水素が真空状態の薄いガスであるということです。次に電子レンジのように電波を使ったりして人為的に暖めます。これで1億度に温度が上がり、水素がプラズマ状態になり、最終的に核融合反応が起こることで発電が可能になります。

☆このときよく受ける質問が「どうして容器の壁が溶けないのですか」です。実は、高温のプラズマは容器の壁に触れていません。プラズマができる容器の外側には超伝導磁石があって、磁場の力でプラズマは空中に浮いています。ここが不思議なところです。そしてプラズマと壁の間は真空で熱が伝わりにくくなっています。まるで魔法瓶と同じです。それでも一部の熱が金属の壁にも伝わり温度が上がります。だから特別な材料が使われ、水などで常に冷やします。温度は数百度になりますが、溶けることはありません。もし壁が少しでも溶けるようなことがあれば、プラズマの温度は一瞬で下がり、核融合反応は自動的に止まります。このことも核融合発電が安全な理由のひとつです。

核融合発電の環境影響と安全性【3】

☆次は燃料とその燃えかす(灰)について考えてみます。核融合発電における燃料は重水素とリチウム(三重水素をつくる原料)です。どちらも海水から採取します。100万キロワットの発電所で1日で使う重水素は1キログラム、リチウムは10キログラムです。そして重水素にもリチウムにも毒性はありません。同じ100万キロワットの原子力発電所では1日に500キログラムの天然ウランが、石炭火力発電所ではなんと1万トンの石炭が必要です。さらに核融合発電の燃料は、爆発したり、テロリストによって悪用されることもありません。(参考文献:ジョセフ・ヴァイス著「核融合エネルギー入門」白水社)

☆そして燃えかすは、ヘリウムです。ヘリウムにも毒性は全くありません。原子力発電では高レベル放射性廃棄物ができますし、火力発電では地球温暖化に影響を与える二酸化炭素が燃えかすとして残ります。

☆このように燃料と燃えかすだけを見ると全くクリーンなエネルギー源と言えるわけです。発電所の中で循環して使う三重水素(トリチウム)の放射能と中性子による金属材料の放射化を考えると完全にクリーンとは言えないことはこれまで説明してきたとおりですが、その環境影響は小さなものです。

核融合発電の環境影響と安全性【2】

核融合発電では中性子のエネルギーを利用するので、装置に使われる金属は中性子が当たって放射能(放射線を出す性質)を持つ放射性物質になります。これだけ聞くとものすごく環境影響があるように感じます。しかしその放射性物質の性質を理解してください。『核融合発電でできる放射性物質は100年で消失する』ものがほとんどで、後世にまで廃棄物を残しません。これが原子力発電との根本的な違いです。(原子力発電で発生する高レベル放射性廃棄物は「地層処分」されますが、1万年以上の管理が必要です。)

☆核融合発電の放射性廃棄物(最終的にリサイクルできるので、廃棄物ではないという考えもあります)の量の減少を説明するために、ヨーロッパの研究者はたびたび石炭火力発電との比較を行います。石炭にはウランとトリウムという放射性物質が微量ですが含まれます。このウランとトリウムが環境に放出されても問題にされることはありません。環境影響が小さいからです。ですが、これらの放射性物質は1億年たっても消えることはありません。(地下にずっと残っていたのですから)

☆さて、核融合発電で発生する放射性廃棄物の危険性は、廃炉後100年経つと石炭火力発電で放出された放射性廃棄物の危険性と同等になります。極端な例を挙げましたが、石炭火力発電の放射性廃棄物の環境影響が無視できるように、100年待てば核融合発電の放射性廃棄物の環境影響も無視できるまで減少することを意味します。しかも核融合発電の廃棄物は(金属なので)環境に放出されることなく、生活圏から隔離され保管されます。(参考文献:ジョゼフ・ヴァイス著「核融合エネルギー入門」白水社)

☆現状のエネルギー源に100%クリーンな環境影響のないものは存在しません。「再生可能エネルギー」にしても何らかの環境影響があります。利点、欠点を理解し、社会に導入していくのがよいと思います。

核融合発電の環境影響と安全性【1】

★ 『核融合発電』については、どうしても危険じゃないかというイメージを持たれていると思います。だから、いくつかの記事で核融合発電の安全性についてお話したいと思います。

☆核融合発電の安全性を研究しているところでは「最悪の事故を仮想」したシミュレーションを行っています。その結果は『どんな最悪事故を仮想しても周辺住民の避難が必要な事態にはならない』です。この結果は核融合発電の安全性の高さを示すものです。また発電所の立地条件を緩和します。(人口過密地近傍の埋め立て地に建設が可能です)

☆最悪事故の例を挙げます。1億度のプラズマを閉じこめている金属壁の冷却が止まってしまい、そのまま何もせずに放置します。壁の温度が1000度近くにまで上昇しますが、溶けてしまうことはありません。地震や火事を想定し、燃料である放射性物質の三重水素(トリチウム)が外部に放出される事故を想定しても、周辺住民が避難するような危険な状態にはなりません。(外部リンク:ヨーロッパの核融合発電所概念設計報告書(英文))

☆このような最悪事故は何重もの安全装置で回避するのは当然のことですが、最悪事故を仮想しておくことも社会に受け入れてもらうためには必要な研究です。これはどのようなエネルギー源についても言えることです。