☆核融合発電の燃料は重水素(水素の同位体)ガスです。海水中に無尽蔵に存在するため、枯渇する心配がありません。ところが、水素の中の重水素の存在比率は0.015%しかありません。「重水素を抽出するために、莫大なエネルギーを使わないのですか?」と質問をされることがあります。その質問にお答えしたいと思います。
☆上の絵は、水の中の分子の様子を表したものです。ほとんどの水分子では、水素(青い玉)2個と酸素(黄色い玉)1個がくっついている状態が、ほんの一部だけは重水素(赤い玉)と酸素がくっついています。この重水素と酸素が結合した水のことを「重水」と呼びます。また普通の水素でできた水を「軽水」と呼びます。(「重水」と「重水素」は違うものですのでご注意ください。また実際には水素1個と重水素1個と酸素1個が結合した水分子があるのですが、話しを簡単にするためにここでは省略します。)
☆「軽水」と「重水」を分離する技術は、すでに工業化されています。新しい方法としては、電気分解を使う方法があります。電気分解(電気で水素と酸素に分解すること)すると、「重水」より「軽水」の方が早く分解します。だから部分的な電気分解を繰り返すと「重水」だけが濃縮されて残っていくというしくみです。
☆「重水」ができれば、後はこれを、完全に電気分解すれば「重水素」ガスと酸素ガスに分解できます。重水素はこうのようにして生産されます。
☆さて問題は、重水素の生産に必要なエネルギーです。生産過程では「重水」生産がほとんどのエネルギーを使います。論文で調べると、1kgの重水を生産するのに必要なエネルギーは57MWh(メガワット時)ということでした。一方、1kgの重水には200gの重水素が含まれてます。この重水素を使って核融合反応を起こすと38,000MWhのエネルギーが発生します。これは重水生産に必要なエネルギー(57MWh)の約700倍になります。つまり、燃料生産に必要なエネルギーは、発電されるエネルギーに対して十分に小さいという結果になります。
(参考:R. Dutton他、Nuclear Engineering and Design 144 (1993) 269)
コメント
重水素と水が分離できるのであれば、何故三重水素と水が分離できないのか。
報道等から現在最も核融合発電の可能背の高い原子核組み合わせは
重水素と三重水素の組み合わせとのことです。
(核融合をそれなりの時間・回数を持続する条件として、重水素+重水素は技術的困難さが高い)
三重水素は海水中にはほとんどないので(各国の原子力発電所から出てくる程度では
とてもとても100万kWの核融合ができたとしても足りない、、、とのこと。
ベリリウムをつかって(他にリチウムの助けも借りて)、
発電しながら、さらに核融合で使う三重水素を生産する予定のようです。
この場合、
海水中に重水素はほぼ無尽蔵にありますが、三重水素のほうは、重水素よりもだいぶ実際に
として採算があう資源量としては、少なうような印象です。
https://marumaru-yamane-fusion.blogspot.com/2016/01/blog-post.html
リチウムは、鉱物としても十分な資源省がありますが、海水中にもとけ込んでいます。海水中のリチウムを採取できれば(開発中)、資源量はほぼ無尽蔵になります。電気自動車が普及すれば、かなりの量のリチウムが使われますので、そのリサイクルでも核融合発電の燃料資源として、十分まかなうことが可能です。