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身近なプラズマいろいろ

オーロラ、炎、稲妻、星雲、太陽コロナ、蛍光灯、ネオンサイン、プラズマテレビなど、身近には色々な プラズマ があります。これらにある共通点がありますよね。そう、「光っている」ことです。 前回プラズマ では、原子から電子が剥がれる( 電離 する)と説明しましたが、逆に原子に電子が戻ることもあります。その時に光を発するのです。だから、ガス状のものが光っていると思ったら、それは大抵プラズマです。そういえば「火の玉」もプラズマだという話があります。(実際に火の玉を見たことありませんが) 上の絵に、色々なプラズマを整理してみました。横の軸は、1立方センチメートルの中に何個の電子(または イオン )が電離して存在するかという数(密度)です。10の右肩に数字を付けたものは、「10のべき乗」といって、すごく大きな数字を表すときに使います。ちなみに、空気(0℃、1気圧)の気体分子の密度は、10の19乗くらいです。ですから、数字自体は大きいですが、空気より密度は小さいということになります。縦の軸は、温度を表しています。 これらの内、比較的温度の低い、オーロラ、炎、稲妻は、気体の全てが原子・分子が電離しているわけではなくて、ごく一部だけです。このようなプラズマを「弱電離プラズマ」と言います。このプラズマは、電子だけが温度が高い(イオンは低い)ので、上の絵では、電子の温度を表しています。絵には載せませんでしたが、蛍光灯の電子は1万度にもなります。どうして蛍光灯を触っても火傷しないのででしょうか。それは、ごく一部の電子が高温なだけで、他のほとんどの気体分子やイオンは温度が低いので、平均すると火傷するような熱さにはならないのです。 一方、比較的温度の高い星雲、太陽コロナなどは、完全に電離してしまっているので、「完全電離プラズマ」と呼ばれます。こちらは、イオンの温度も高くなります。お気付きかもしれませんが、完全に電離していたら、イオン=原子核です。将来の核融合発電に必要なプラズマを研究している 大型ヘリカル装置 のプラズマもほぼ完全電離プラズマで、イオンの温度が 1億度 にもなります。 上の絵に、 太陽の中心部 がないのですが、これは別格です。粒子の密度が10の26乗もあり、上の絵には入りきらないのです。比重にすると、金属でも重たい鉛の10倍以上で、プラズ...

1億度をどうやって測るの?

☆ 前回、1億度の話し をしましたが、今回はその温度をどうやって測るかを書きます。温度計を挿すわけにはいきません。それでは・・・前回書いたように、気体や プラズマ の粒子の速度は、温度が高くなるにつれて、速くなっていきます。つまり粒子の速度を測れば、温度が分かることになります。そう、速度を測れば良いのです。 ☆「ドップラー効果」という言葉を聞いたことありませんか。身近では救急車の音でその効果を感じることができます。救急車の音は近づいてくる時、高い音に聞こえます。そして遠ざかる時は低い音に聞こえます。下の絵のように、自分の目の前を通りすぎると音が変わるのです。そしてその音の変わり方で救急車の速度も分かるのです。これを利用したものに、高速道路などにある自動速度取締機(通称オービス)があります。車の速度を測るためにドップラー効果を利用しています。 ☆さて、プラズマの温度を測るためにも、ドップラー効果を利用して粒子の速度を測ります。ドップラー効果は音だけでなく、光でも起こります。つまりプラズマから出てくる光や、プラズマにレーザーを当てたときの散乱した光を見たりして、粒子(イオンや電子)の速度を測ります。粒子の速度が速いほど、光の波長(色)の変化(広がり)が大きくなるわけです。ほとんど極限状態の温度を測るわけですから、この温度の測り方も大切な研究テーマになっています。 ☆非常に遠くの星(銀河)までの距離も、このドップラー効果を使って測ることができます。( 外部リンク:国立天文台 )宇宙は膨張しているので、遠くの星ほど速い速度で遠ざかっています。星からの光の波長のずれから遠ざかる速度が測定できて、その速度から距離が推定できるというわけです。誰が考えたのか、すごいですね。

太陽や星で核融合が起こっていることを明らかにしたのは誰?

☆太陽や星で核融合反応が起こっていることを明らかにしたのは誰で、いつ?東京大学立花ゼミのHPに「戸塚洋二の科学入門」 ( 外部リンク ) という興味深い解説記事があります。そこにこの答えが書かれていました。「1939年、アメリカのコーネル大学に所属する当時33歳のハンス・ベーテ博士が1編の論文を発表しました。タイトルは、『星のエネルギー発生について、“Energy Prodaction in Stars"』でした。この論文は太陽を含む恒星のエネルギーが核反応によって作られることを初めて明らかにしたものです。」1939年と言えば約70年前のことです。 ☆最初に発表されたのは、たった1ページの短い論文(編集者への手紙)で、星や太陽で起こっている核融合反応や、太陽の中心は2000万度であることが書かれてました。今の教科書には、太陽の中心温度は1500万度と書かれているので、ほとんど同じです。 ☆でも実は「太陽のエネルギー源の本当の検証は、最近になってようやく完了しました。」その検証に大きな役割を果たしたのが戸塚先生です。その先生が核融合発電についても言及しています。「エネルギー発生効率の高い核融合、つまり『地上に太陽を作る』ことを推進すべきです。燃料は水素の同位体ですから、地球上に無尽蔵にあります。」この言葉に私も少し勇気をもらいました。 (括弧内はすべて、 立花ゼミHP「戸塚洋二の科学入門」 より引用させていただきました) ☆本も出版されています。「戸塚教授の『科学入門』E=mc2は美しい!」講談社(2008)です。ぜひ読んでみてください。

私たちは核融合反応によってできた「星のかけら」でできています

☆宇宙ができたとき、この世に存在する元素は水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウムといった軽い元素だけでした。それらが集まって星になり、核融合反応を起こし、より重い元素に変わっていきます。水素はヘリウムに、ヘリウムは炭素や酸素に、最終的には鉄まで重くなっていきます。(鉄より重い元素はまた別の反応でできます)星は最後には超新星爆発によって宇宙に飛び散っていきます。その星屑が集まってできたのが、地球であり、人間なのです。つまり、人間は、核融合反応によってできた「星のかけら」なのです。 ☆天文学者のカール・セーガン著「人はなぜエセ科学に騙されるのか(上)」に次のような一節があります。「水素を別にすれば、人体を作っているすべての原子は、血の中の鉄にしろ、骨をつくるカルシウムにしろ、脳の中の炭素にしろ、何千光年もかなたの赤色巨星のなかで、何億年も昔に作られたものなのだ。『われわれは星屑でできている』というのは、私のお気に入りのセリフである。」

太陽(星)は核融合エネルギーで光っています

☆今日は七夕。「制御された」核融合エネルギーの発生は人工的には実現していません。でも核融合エネルギーは、この宇宙では特別なものではありません。太陽のようにキラキラ光る星(惑星や衛星じゃない星)のすべてが核融合エネルギーを使って熱を発生し、光っています。だから太陽光エネルギーや風力エネルギーを使うことも、ものすご〜く間接的に核融合エネルギーを使っていることになります。私たちが研究しているのは、太陽(星)で起こっている核融合反応を地上で人工的に実現しようということです。 NASA: http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod/ap090707.html ☆太陽は、水素が燃えていると言ってもいいのですが、木やガスや石油が燃えるというのは、炭素に酸素がくっついて、二酸化炭素などに変わることを言います。だから空気(酸素)がないと燃えません。ところが太陽の中には、酸素もないし、周りに空気もありません。だから普通に燃えているのと違うことがわかります。 ☆太陽の中では、水素同士がぶつかって、そしてくっついて、ヘリウムに変化しています。だから75%が水素で、残りがヘリウムです。このように水素がヘリウムに変わることを核融合反応と呼んでいます。そのときのエネルギー発生によって、燃えている(輝いている)ように見えているのです。