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空の太陽と地上の太陽「核融合発電」の違い

☆太陽中心では、4個の水素の原子核が融合して、最終的にヘリウムに変わる核融合反応(原子核が融合する反応)が進行しています。このとき、約0.7%の 質量が消失 して、そのエネルギーが光(電磁波)として放出されています。今も太陽は、1秒間に約42億キログラムずつ軽くなっているそうです [1]。でも太陽は想像以上に巨大なので、あと50億年は核融合反応を続けられます。 太陽中心で起こっている核融合反応 ☆ところがこの反応(特に最初の水素同士の融合反応)は、非常にまれにしか起こりません。個々の水素原子核について見ると、その寿命が10億年、つまり10億年に1回くらいしか反応しないそうです。だから、太陽の中心のエネルギー発生密度は、1立方メートルあたり270ワットしかありません [2]。(ちなみに人間は約1,000ワット)これでは、たとえ小さな太陽を地上に作ったとしてもエネルギー源にはならないことは明白です。 ☆そこで、地上の太陽「 核融合発電 」では、普通の水素ではなく、その同位体である 重水素 と 三重水素 の核融合反応を使います。(重水素の記号Dと三重水素の記号Tを使ってD-T反応とも言います)これが一番起こしやすい、確率の高い反応だからです。幸い地球上には初期の宇宙で作られた重水素が残っていました。海には50兆トンもの重水素があります。三重水素は、自然界にあまり存在しませんが、同じく海水に含まれる2,000億トンの リチウムから生産 することができます。地球上には奇跡的に核融合発電に使用できる燃料が存在していたのです。もし、これらが地球上に存在しなければ、核融合発電の構想は生まれなかったでしょう。 地上の太陽「核融合発電」で用いる核融合反応 ☆D-T反応では、 中性子 とヘリウムが発生しますが、 中性子の運動エネルギーを熱エネルギーに変換 して発電に使います。一方、ヘリウムの運動エネルギーは、プラズマの温度を維持するために使われます。いずれにしても、この反応は 核分裂反応 と異なり、中性子を介在した連鎖反応でないことが分かります。従って、止めることが容易であり、原理的に暴走しません。 参考文献 [1] Newton別冊「アインシュタインの世界一有名な式 E=mc2」 [2] ローレンス・リバモア国立研究のWebペ...

身近なプラズマいろいろ

オーロラ、炎、稲妻、星雲、太陽コロナ、蛍光灯、ネオンサイン、プラズマテレビなど、身近には色々な プラズマ があります。これらにある共通点がありますよね。そう、「光っている」ことです。 前回プラズマ では、原子から電子が剥がれる( 電離 する)と説明しましたが、逆に原子に電子が戻ることもあります。その時に光を発するのです。だから、ガス状のものが光っていると思ったら、それは大抵プラズマです。そういえば「火の玉」もプラズマだという話があります。(実際に火の玉を見たことありませんが) 上の絵に、色々なプラズマを整理してみました。横の軸は、1立方センチメートルの中に何個の電子(または イオン )が電離して存在するかという数(密度)です。10の右肩に数字を付けたものは、「10のべき乗」といって、すごく大きな数字を表すときに使います。ちなみに、空気(0℃、1気圧)の気体分子の密度は、10の19乗くらいです。ですから、数字自体は大きいですが、空気より密度は小さいということになります。縦の軸は、温度を表しています。 これらの内、比較的温度の低い、オーロラ、炎、稲妻は、気体の全てが原子・分子が電離しているわけではなくて、ごく一部だけです。このようなプラズマを「弱電離プラズマ」と言います。このプラズマは、電子だけが温度が高い(イオンは低い)ので、上の絵では、電子の温度を表しています。絵には載せませんでしたが、蛍光灯の電子は1万度にもなります。どうして蛍光灯を触っても火傷しないのででしょうか。それは、ごく一部の電子が高温なだけで、他のほとんどの気体分子やイオンは温度が低いので、平均すると火傷するような熱さにはならないのです。 一方、比較的温度の高い星雲、太陽コロナなどは、完全に電離してしまっているので、「完全電離プラズマ」と呼ばれます。こちらは、イオンの温度も高くなります。お気付きかもしれませんが、完全に電離していたら、イオン=原子核です。将来の核融合発電に必要なプラズマを研究している 大型ヘリカル装置 のプラズマもほぼ完全電離プラズマで、イオンの温度が 1億度 にもなります。 上の絵に、 太陽の中心部 がないのですが、これは別格です。粒子の密度が10の26乗もあり、上の絵には入りきらないのです。比重にすると、金属でも重たい鉛の10倍以上で、プラズ...

太陽コロナを音楽で表現すると・・

コロナループの写真(TRACEのHP (外部リンク) より) 英国のシェフィード大学の研究者が、太陽の表面のコロナの動きを科学的に音楽に変換して、大学のホームページ (外部リンク) に公開しました。たったの6秒間ですが、だまされたと思って聞いてみてください。太陽だけあって神々しさを感じる音楽です。自然現象を音楽で表現するというのは、なかなか面白いです。 太陽の表面は6000度というのは知られていますが、表面から噴出しているコロナは100万度にも達する プラズマ です。あるときは数10万キロメートル(地球の直径の10倍以上)も吹き出ることもあります。写真を見て分かるように噴出したコロナはループを描いて表面に戻っています。これは 磁力線にプラズマが巻き付く性質 があるからです。 核融合発電 のことを「地上の太陽」というキャチフレーズで呼ぶことがありますが、太陽のスケールはあまりにも大きいので、「地上の太陽」はちょっと大げさな気もしてきます。

太陽と「地上の太陽」の違い【3】

☆以前、太陽中心で起こっている核融合と「地上の太陽」と呼ばれている 核融合発電 の違い( 【1】 と 【2】 )を紹介しました。それは次の二つの大きな違いです。 水素ガス(プラズマ)の圧力:   太陽 2500億気圧   発電 数気圧 水素ガス(プラズマ)閉じ込めの原理:   太陽 重力(地球の30万倍の重さ)   発電 超伝導磁石を使った強い磁場 ☆すでに紹介したことがあるのですが、最後に三つ目の違いを紹介します。それは、融合(フュージョン)反応を起こしている水素の種類の違いです。 ☆太陽では、水素の原子核が2個(つまり陽子が2個)融合して 重水素 (陽子1個と中性子1個の原子核)になる反応が最初に起こります。引き続いて重水素が別の融合反応を起こして、ヘリウムに変わっていきます。最初の水素同士の融合反応はとても起こりにくい反応なので、太陽と同じことを地上で実現し、エネルギー源とすることはまず不可能です。 太陽の融合反応 ☆一方、地上の 核融合発電 では、燃料に水素ではなく、 重水素 と 三重水素 (陽子1個と中性子2個の原子核)を使います。これは融合反応を一番起こしやすい水素の仲間(同位体)です。幸いにも地球上には初期の宇宙で作られた重水素が残っていました。海には50兆トンもの重水素があります。( 水の形で )三重水素は、自然界にほとんど存在しませんが、同じく海水に含まれる2000億トンの リチウムから生産 することができます。偶然というか、奇跡というか、自然界にはエネルギー源となりうる融合反応の燃料が存在していたのです。もしこれらの燃料が地球上になければ、核融合発電の実現可能性はゼロだったでしょう。 核融合発電の融合反応

太陽や星で核融合が起こっていることを明らかにしたのは誰?

☆太陽や星で核融合反応が起こっていることを明らかにしたのは誰で、いつ?東京大学立花ゼミのHPに「戸塚洋二の科学入門」 ( 外部リンク ) という興味深い解説記事があります。そこにこの答えが書かれていました。「1939年、アメリカのコーネル大学に所属する当時33歳のハンス・ベーテ博士が1編の論文を発表しました。タイトルは、『星のエネルギー発生について、“Energy Prodaction in Stars"』でした。この論文は太陽を含む恒星のエネルギーが核反応によって作られることを初めて明らかにしたものです。」1939年と言えば約70年前のことです。 ☆最初に発表されたのは、たった1ページの短い論文(編集者への手紙)で、星や太陽で起こっている核融合反応や、太陽の中心は2000万度であることが書かれてました。今の教科書には、太陽の中心温度は1500万度と書かれているので、ほとんど同じです。 ☆でも実は「太陽のエネルギー源の本当の検証は、最近になってようやく完了しました。」その検証に大きな役割を果たしたのが戸塚先生です。その先生が核融合発電についても言及しています。「エネルギー発生効率の高い核融合、つまり『地上に太陽を作る』ことを推進すべきです。燃料は水素の同位体ですから、地球上に無尽蔵にあります。」この言葉に私も少し勇気をもらいました。 (括弧内はすべて、 立花ゼミHP「戸塚洋二の科学入門」 より引用させていただきました) ☆本も出版されています。「戸塚教授の『科学入門』E=mc2は美しい!」講談社(2008)です。ぜひ読んでみてください。

太陽の核融合の不思議

☆いつも見ている太陽ですが、実は内部のことはあまり知られていません。私なりに勉強したことをまとめてみます。(間違っていたらコメントください)太陽の中心(コア)で起こっていること、それは核融合反応です。上の絵のように水素の4つが融合してヘリウムに変わる反応です。この反応が太陽の半径の30%より中心で起こっています。融合したときに発生するガンマ線が太陽のエネルギー源になります。 【不思議1】この融合反応は、とてもゆっくり起こります。つまりめったに起きないということです。だから太陽の中心の発熱量は同じ体積で比較して 人間の体内の発熱量の1/10 しかありません。(1立方メートルあたり、太陽中心は270ワット、人間は2000ワット)なのにどうして太陽は熱いのか?それは巨大だからです。言い換えると、巨大でゆっくり反応しているおかげで、太陽は50億年も燃え続けているのです。そしてこの後50億年燃え続けます。 【不思議2】教科書などで、太陽の中心は光輝くように白く描かれています。(周りが赤色)これはどうも間違いのようです。温度が高い(1500万℃)ので、白く輝いているようなイメージが生まれるのでしょう。太陽の中心で発生しているのはガンマ線なので、目に見える色はありません。だから 中心の色は暗黒 なのが正解です。ガンマ線は外に行くに従ってエネルギーを失っていき、目に見える光に変わって行きます。これを色で表現すると上の絵のようになります。 【不思議3】中心で発生したエネルギーは表面に到達するまでに 100万年 もかかるそうです。私たちが見ている太陽の光は100万年前に起きた核融合反応に由来するものです。中心部から表面に向かってエネルギーは光によって運ばれます。なにもなければ光は速いものですが、太陽の中は圧縮された水素で霧がかかったようになっていて光が透りにくくなっています。だから光でも時間がかかってしまうのです。 参考: アメリカの研究所が作った教育用Webページ(外部リンク)    G.マクラッケン、P.ストット著「フージョン宇宙のエネルギー」

太陽と「地上の太陽」の違い【2】

☆太陽の中心では2500億気圧の圧力があります。これに対して「地上の太陽( 核融合発電 )」では磁場の容器、「 磁場のかご 」を使って、わずか数気圧の気体を閉じ込めます。この違いをもう少し詳しく説明します。 ☆気体の圧力は、温度が高いほど、また粒子(分子、原子核、電子など)の数が多いほど、大きくなります。地上で核融合反応を起すためには、約1億度の温度が必要です。圧力は温度に比例するので、大気圧の気体は、簡単に数10万気圧になってしまいます。これでは数100気圧の「 磁場のかご 」では閉じ込めることができません。圧力を数気圧まで小さくする必要があります。そこで「地上の太陽」では、粒子の数を減らして、真空状態に近い状態します。圧力は粒子の数にも比例するので、 1億度 に加熱しても圧力は数気圧におさまります。 ☆ 核融合発電 に使う燃料には、真空状態に近い薄い気体を使います。こんなに薄い気体なのに、発電できるようなエネルギーを出すところが、核融合発電の不思議なところです。(この 仕組み については後日説明します)また、温度が上がりすぎたり、燃料を入れすぎると、気体の圧力が上がって「 磁場のかご 」で閉じ込められなくなるため、自動的に核融合反応が止まります。 核融合発電で反応の暴走が起こらない のは、このような理由だからです。

太陽と「地上の太陽」の違い【1】

☆太陽も核融合エネルギーで輝いていますが、同じ核融合エネルギーを地上で実現し、発電に利用しようとしているので、私たちは「地上に太陽を」というキャッチフレーズを使っています。 ☆しかし、実際の太陽と「地上の太陽」には大きな違いがあります。太陽は75%が水素でできていて、中心(核)のところの圧力が2500億気圧、温度が1500万度になっています。こんな想像を超えるところで核融合反応が起こっています。水素は気体なので、圧力を与えるためには、なにか容器のようなものが必要な気がします。でも太陽は真空中に浮いているだけです。容器のかわりをしているのが、想像を超える重力です。太陽の重さは地球の30万倍。その重力が中心に向かって働いています。 ☆太陽中心を地上に再現することは不可能です。太陽のような重力はありませんし、金属の容器でそのような超高圧・超高温のガスを閉じ込めることができないのです。そこで地上の「制御された核融合」発電では、目に見えない磁場を容器(『磁場のかご』)として高温のガスを閉じ込めます。つまり超伝導磁石(マグネット)という強力な磁石を使って『磁場のかご』を作ります。ピップエレキバンの125倍の磁場(10テスラ)を発生させると400気圧の『磁場のかご』ができます。太陽とは桁違いに小さい圧力でしか閉じ込めることができない容器ですが、このことを現実として受け止め、核融合反応を実現しなければなりません。「地上の太陽」実現の難しさは、このようなところから生まれています。

太陽(星)は核融合エネルギーで光っています

☆今日は七夕。「制御された」核融合エネルギーの発生は人工的には実現していません。でも核融合エネルギーは、この宇宙では特別なものではありません。太陽のようにキラキラ光る星(惑星や衛星じゃない星)のすべてが核融合エネルギーを使って熱を発生し、光っています。だから太陽光エネルギーや風力エネルギーを使うことも、ものすご〜く間接的に核融合エネルギーを使っていることになります。私たちが研究しているのは、太陽(星)で起こっている核融合反応を地上で人工的に実現しようということです。 NASA: http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod/ap090707.html ☆太陽は、水素が燃えていると言ってもいいのですが、木やガスや石油が燃えるというのは、炭素に酸素がくっついて、二酸化炭素などに変わることを言います。だから空気(酸素)がないと燃えません。ところが太陽の中には、酸素もないし、周りに空気もありません。だから普通に燃えているのと違うことがわかります。 ☆太陽の中では、水素同士がぶつかって、そしてくっついて、ヘリウムに変化しています。だから75%が水素で、残りがヘリウムです。このように水素がヘリウムに変わることを核融合反応と呼んでいます。そのときのエネルギー発生によって、燃えている(輝いている)ように見えているのです。