スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

ラベル(プラズマ)が付いた投稿を表示しています

身近なプラズマいろいろ

オーロラ、炎、稲妻、星雲、太陽コロナ、蛍光灯、ネオンサイン、プラズマテレビなど、身近には色々な プラズマ があります。これらにある共通点がありますよね。そう、「光っている」ことです。 前回プラズマ では、原子から電子が剥がれる( 電離 する)と説明しましたが、逆に原子に電子が戻ることもあります。その時に光を発するのです。だから、ガス状のものが光っていると思ったら、それは大抵プラズマです。そういえば「火の玉」もプラズマだという話があります。(実際に火の玉を見たことありませんが) 上の絵に、色々なプラズマを整理してみました。横の軸は、1立方センチメートルの中に何個の電子(または イオン )が電離して存在するかという数(密度)です。10の右肩に数字を付けたものは、「10のべき乗」といって、すごく大きな数字を表すときに使います。ちなみに、空気(0℃、1気圧)の気体分子の密度は、10の19乗くらいです。ですから、数字自体は大きいですが、空気より密度は小さいということになります。縦の軸は、温度を表しています。 これらの内、比較的温度の低い、オーロラ、炎、稲妻は、気体の全てが原子・分子が電離しているわけではなくて、ごく一部だけです。このようなプラズマを「弱電離プラズマ」と言います。このプラズマは、電子だけが温度が高い(イオンは低い)ので、上の絵では、電子の温度を表しています。絵には載せませんでしたが、蛍光灯の電子は1万度にもなります。どうして蛍光灯を触っても火傷しないのででしょうか。それは、ごく一部の電子が高温なだけで、他のほとんどの気体分子やイオンは温度が低いので、平均すると火傷するような熱さにはならないのです。 一方、比較的温度の高い星雲、太陽コロナなどは、完全に電離してしまっているので、「完全電離プラズマ」と呼ばれます。こちらは、イオンの温度も高くなります。お気付きかもしれませんが、完全に電離していたら、イオン=原子核です。将来の核融合発電に必要なプラズマを研究している 大型ヘリカル装置 のプラズマもほぼ完全電離プラズマで、イオンの温度が 1億度 にもなります。 上の絵に、 太陽の中心部 がないのですが、これは別格です。粒子の密度が10の26乗もあり、上の絵には入りきらないのです。比重にすると、金属でも重たい鉛の10倍以上で、プラズ...

プラズマってなに?おおざっぱにいうと

核融合発電にも利用されるプラズマ。今回は、プラズマの説明をざっくりとしてみようと思います。まず、原子がプラスの電気を帯びた原子核とその周りにあるマイナスの電気を帯びた電子からできていることを思い出してください。電子の数は一つのときもあるし、多数のときもあります。(つまり上の絵は、省略して単純に書いています) その電子が、原子から離れたとしましょう。何個の電子が離れたかはここでは考えないことにします。電子が離れた残りの原子を、特別に「イオン」と呼びます。(スーパーの名前と同じなので覚えやすいですね)そして電子が離れることを、そのまま「電離(でんり)」と呼びます。 気体は、分子の集まりです。分子は原子が1個または複数個くっついたものです。空気だったら窒素分子(窒素原子2つ)と酸素分子(酸素原子2つ)が80%対20%で混じり合っています。上の絵は、分子が1個の原子からできているとして、気体を書いています。(これも単純化のため) 気体の温度が数千度くらいになると、最初に言った「電離」が始まります。気体で電離が起こると、上の絵の右のように、イオンと電子がバラバラに自由に動き回っている状態になります。これ状態を「プラズマ」と呼びます。 プラズマ特徴は、気体が電離したものだから、プラスの数とマイナスの数が同じです。上の絵だと10個ずつです。だから、全体としてみると気体とおなじように電気的に(ほぼ)中性です。ところが、このプラズマに電池につながった電極を近づけると、イオンはマイナスの電極に向かって走り、電子はプラスの電極に向かって走り出します。つまり、電流が流れるのです。これは普通の気体には見られない特徴です。 また、磁石に対しては、離れようとする「反磁性」という性質があります。磁石にくっつく鉄と反対の性質です。この性質をうまく利用すると、磁場でプラズマを閉じ込めることができ、 核融合発電 の原理にもなっていきます。 身近にもプラズマは存在しますので、次回紹介しますね。

大型ヘリカル装置の超伝導コイルが捩れている理由

☆私たちの研究所(岐阜県土岐市)では、世界最大の ヘリカル型 プラズマ実験装置である「 大型ヘリカル装置 」を用いて、高温 プラズマ を閉じ込める研究を行っています。この「ヘリカル」というのは「らせん状の」という意味で、ドーナツ状のプラズマの周りにらせん状の 超伝導コイル が巻き付けられていることから名付けられました。(下の絵をご覧下さい) ☆では、どうしてらせん状のコイルが必要なのでしょうか?それは洗濯機のように粒子をかき混ぜるためなのです。ドラム式洗濯機を思い浮かべてください。ドラムが回っていないと、洗濯物は下に溜まってしまいます。同じように、ドーナツ状の プラズマ の中では、下の絵(ドーナツの断面)の左側のように、プラスの電気を帯びた粒子(原子核)とマイナスの電気を帯びた粒子(電子)が、上下に分離してしまいます。これでは、上手く閉じ込められないことが分かっています。そこで、 粒子が磁場にまとわり付く 性質を利用し、コイルをらせん状にして、上下をかき混ぜてしまおうというのです。かき混ぜると、下の絵の右側のように、原子核と電子が上手く混ざり合います。ドラム式洗濯機のドラムを回すと、洗濯物が全体に広がるのと同じですね。 ☆さて、磁場でプラズマを閉じ込める型にはもう一つ、トカマク型があります。こちらのコイルは下の絵のようにらせん状ではなくリング状です。この形のコイルだけでは、かき混ぜる効果はありません。そこでトカマク型では、プラズマに電流を流します。その電流がらせん状の磁場を作り出し、粒子をかき混ぜる仕組みになっているのです。ですから、コイルの形は単純ですが、プラズマに電流を流す工夫が必要になってきます。

核融合発電炉のプラズマの温度分布

核融合発電炉 のプラズマは、水素の仲間( 重水素 と 三重水素 )を 真空状態に近い希薄なガス にし、 1億度 まで加熱したものです。これを 『プラズマ』 と呼びます。プラズマは(直径が20メートルぐらいの)丸い ドーナッツ状 をしています。プラズマの周りは真空で、その周りを プランケット と呼ばれる 熱を取り出す 装置で覆っています。ブランケットの温度はだいたい500度。そしてその外側がマイナス269度に冷やされた 超伝導電磁石 です。 これだけの説明だと誤解を招いてしまうことが、これまで何度かありました。プラズマが1億度で、その近くのブランケットが500度なんて現実的にありえないという誤解です。だから少し補足しておきたいと思います。 実際にはプラズマには温度分布があります。(上の右側の絵)中心が一番温度が高くて、外側の方は温度が低くなります。温度の分布を見ると山のような形をしています。1億度を超え、核融合反応を起こすのは、プラズマの中心部だけです。そしてプラズマの表面ではブランケットの温度の500度近くまで下がります。(これだと現実的ですよね。) 温度分布が山の形をしているということは、熱が外に逃げているということを意味します。熱が逃げるということは温度が上がりにくいということです。ですから、熱が逃げにくい温度分布を色々工夫して作り出す研究が積極的に行われています。

もし1億度のプラズマが金属容器に当たったら?

核融合発電 では、 1億度 の水素ガス( プラズマ と呼びます)を作ることが必要です。でも、「 1億度 の水素プラズマが 金属容器 に当たるとドロドロに溶けてしまうのではないか」というご質問をよく受けます。ここでは、(厳密さより分かりやすさを優先して)それにお答えしたいと思います。 まず、通常の運転では、プラズマは目に見えない 磁場のカゴ で閉じ込められ(浮遊し)、金属容器の壁には当たっていません。(離れていて、間は真空)だから壁が溶けたりはしません。 でも、磁場のカゴが急になくなって・・・と心配になりますよね。 では、装置として実物のある 大型ヘリカル装置(LHD) を例にしてお答えします。水素プラズマの周囲にある金属容器の重さは65トン(6500万グラム)です。これに対して、1億度の水素プラズマの重量はたったの0.02グラム。これは金属容器の重さの30億分の1という小ささです。さて、コップの水(室温)に、100度のお湯を一滴入れたとして、お湯の温度は変わるでしょうか。また、重たい鉄板にお湯を一滴垂らしてみたらどうでしょうか。コップの水や鉄板の温度はほとんど変わりません。これと同じで、65トンの金属容器に0.02グラムの水素プラズマが当たっても(それがたとえ1億度であっても)溶けたりはしません。あまりにも重さが違いすぎるのです。

ロウソクもプラズマ!?

☆ロウソクの灯りは癒されますよね。特に和ろうそく。 ☆ロウソクの炎の一番明るい黄白色のところは高温で、2000℃近くになっています。これぐらいの温度になると原子から電子が飛び出して、広い意味で プラズマ になっています。その証拠に、ロウソクの炎に1キロボルトぐらいの高電圧のかかった線を近づけると炎の尖端はマイナスの線の方に近づきます。つまりロウソクの尖端は、電子が飛び出して少ない状態になって、プラスの電気を帯びていいるわけです。ただし、すべての原子・分子から電子が飛び出しているわけではなく、ほんの一部だけです (たった100億個に1個)。このようなプラズマは「弱電離プラズマ」と呼ばれます。 ☆ロウソクの炎もプラズマ。プラズマって結構身近なものです。 (参考)A. von Engel 著 山本賢三、奥田孝美共訳、改訂電離気体     菊池満著、物理学と核融合

プラズマの語源って?

☆ プラズマ という言葉は、電器店などで耳にすることがあります。「プラズマテレビ」「プラズマイオン」「プラズマクラスター」。。今朝、テレビで「マイコプラズマ」肺炎が流行?!というニュースを耳にしました。「 プラズマ 」というと、『原子から電子がはぎ取られ、正の電荷を持つイオンと負の電荷を持つ電子が自由勝手気ままに運動している状態(物質の第4の状態)』と思っていたのですが、微生物である「マイコプラズマ」がそんな状態になっているわけはありません。さて? ☆そこで「プラズマ」の語源を調べてみました。まずギリシャ語でした。そしてその意味は「型で作ったもの」「ある形に作ったもの」という意味でした。「マイコ」は「カビの」という意味で、マイコプラズマという微生物を培養するとカビのような形になることから「マイコプラズマ」と名付けられたようです。(専門ではないので、間違っていたらすみません) ☆となると物質の第4の状態を「プラズマ」と呼ぶほうが不思議になってきます。物質の第4の状態に「プラズマ」という名前を付けたのは、アメリカのラングミュア(Langmuir)博士で、1928年の論文で初めて使われました。どうしてそう名付けたのかは、実は定かではありません。あれっ? ☆「プラズマ」という言葉は、中世以来「人間にではなく造物主によって作られたもの」という神秘的な意味合いで使われるようになっていきます。細胞の中の原形質を「プロトプラズム(Protoplasm)」、血液の中の血漿を「ブラッドプラズマ(Blood plasma)」と呼ぶのもこのような神秘的な意味が語源になっているようです。ラングミュア博士もプラズマのゆらゆらした状態を見て、なにか神秘的なものを感じたのではないでしょうか。 (参考:後藤憲一、プラズマ物理学、共立出版)

太陽コロナを音楽で表現すると・・

コロナループの写真(TRACEのHP (外部リンク) より) 英国のシェフィード大学の研究者が、太陽の表面のコロナの動きを科学的に音楽に変換して、大学のホームページ (外部リンク) に公開しました。たったの6秒間ですが、だまされたと思って聞いてみてください。太陽だけあって神々しさを感じる音楽です。自然現象を音楽で表現するというのは、なかなか面白いです。 太陽の表面は6000度というのは知られていますが、表面から噴出しているコロナは100万度にも達する プラズマ です。あるときは数10万キロメートル(地球の直径の10倍以上)も吹き出ることもあります。写真を見て分かるように噴出したコロナはループを描いて表面に戻っています。これは 磁力線にプラズマが巻き付く性質 があるからです。 核融合発電 のことを「地上の太陽」というキャチフレーズで呼ぶことがありますが、太陽のスケールはあまりにも大きいので、「地上の太陽」はちょっと大げさな気もしてきます。

小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジンと核融合発電との関連

イオンエンジンのイメージ図 ☆昨日のニュースで、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」が、1週間後の13日に地球帰還することが確実になったと報道されました。トラブルを乗り越えながらの7年の航行を終えての帰還です。こんな長い距離を航行するわけですから、エンジンがついています。普通エンジンといえば燃焼を使ったものを想像しますが、宇宙では燃焼のための酸素を使うことができません。そこで燃料と電気だけで動く「イオンエンジン」が使われています。つまりキセノンという燃料ガスを電気で加速して噴射する仕組みのエンジンです。「はやぶさ」はイオンエンジンを初めて実用化した探査機なのです。 ☆このイオンエンジンですが、 核融合発電 とも関連があります。一つ目は、 プラズマ を使っているところです。イオンエンジンでは、まず燃料ガスを プラズマ状態 します。そうすると粒子が電気を帯びる(プラスのイオンになる)ので、太陽電池で発電した電気で加速することができるわけです。(上の絵がそのイメージです)核融合発電では、水素ガスを燃料にした高温のプラズマを作って、この プラズマを発電 に使います。ということで、プラズマを使うところが同じです。 核融合発電の加熱装置のイメージ図 (加速される粒子はプラスとマイナスの両方の場合があります) ☆二つ目は、イオンエンジンをもっと強力にした装置を、 核融合発電 では加熱装置に使用します。名前は難しいですが「中性粒子入射加熱装置(NBI)」といいます。この加熱装置で加速した水素の粒子を、今度は加熱したい水素のプラズマに入射して、 プラズマの温度 を上げていきます。(電気で粒子を加速するところがイオンエンジンと同じです)冷たい水に、ヤカンで沸かした熱い湯を注いでいくようなイメージです。 ☆このように最先端といわれる技術は、異分野間でお互いに関連して進歩しています。こうしたことを「技術の波及効果」といいます。他にも核融合研究の技術が身の回りに使われていることが意外にあります。 参考:JAXAのホームページ http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/about/principle2.html

1億度をどうやって測るの?

☆ 前回、1億度の話し をしましたが、今回はその温度をどうやって測るかを書きます。温度計を挿すわけにはいきません。それでは・・・前回書いたように、気体や プラズマ の粒子の速度は、温度が高くなるにつれて、速くなっていきます。つまり粒子の速度を測れば、温度が分かることになります。そう、速度を測れば良いのです。 ☆「ドップラー効果」という言葉を聞いたことありませんか。身近では救急車の音でその効果を感じることができます。救急車の音は近づいてくる時、高い音に聞こえます。そして遠ざかる時は低い音に聞こえます。下の絵のように、自分の目の前を通りすぎると音が変わるのです。そしてその音の変わり方で救急車の速度も分かるのです。これを利用したものに、高速道路などにある自動速度取締機(通称オービス)があります。車の速度を測るためにドップラー効果を利用しています。 ☆さて、プラズマの温度を測るためにも、ドップラー効果を利用して粒子の速度を測ります。ドップラー効果は音だけでなく、光でも起こります。つまりプラズマから出てくる光や、プラズマにレーザーを当てたときの散乱した光を見たりして、粒子(イオンや電子)の速度を測ります。粒子の速度が速いほど、光の波長(色)の変化(広がり)が大きくなるわけです。ほとんど極限状態の温度を測るわけですから、この温度の測り方も大切な研究テーマになっています。 ☆非常に遠くの星(銀河)までの距離も、このドップラー効果を使って測ることができます。( 外部リンク:国立天文台 )宇宙は膨張しているので、遠くの星ほど速い速度で遠ざかっています。星からの光の波長のずれから遠ざかる速度が測定できて、その速度から距離が推定できるというわけです。誰が考えたのか、すごいですね。

1億度ってどんな温度?

☆ 核融合発電 では1億度の水素の プラズマ を使いますと見学者に説明すると、びっくりされます。1億度という温度が容易にイメージできないからです。そしてそのことを怖がる人もいます。だからプラズマを温度で表現するのは慎重にしないといけないようです。 ☆気体は目に見えませんが、小さな粒子(分子)がある速度で動き回っています。上の絵のように、色々な方向に飛び回っています。私たちの周りの空気(窒素分子と酸素分子がほとんど)だと秒速300メートルほどです。でも空気の粒子が当たって痛いと思う人はいませんよね。(これって不思議です) ☆さて、気体の温度が高くなると、粒子の速度も速くなっていきます。 プラズマ になって、イオンと電子に分離しても、粒子の速度は温度が高くなるにつれて速くなっていきます。(イオンと電子の速度が同じとは限りません。)例えば「蛍光灯」は身近なプラズマの代表ですが、中の粒子(電子)は、1万度の温度になったときと同じ速度(毎秒600キロメートル)で走っています。『蛍光灯が1万度?』またまた話しがややこしくなってきました。蛍光灯を触っても、火傷するほど熱くはないですよね。 ☆私たちが熱いとか冷たいとか感じるのは、温度だけでなく、(温度)×(粒子の数)が関係しているのです。(熱の伝わりやすさも関係しますが・・)蛍光灯の中に1万度の電子がいても、その数がものすごく少なければ、熱くなりません。実際にものすごく少ないのですが。 ☆さて、核融合発電のプラズマは、粒子(原子核)の数(密度)が空気の10万分の1くらいしかありません。(真空と言ってもよい状態なのです)1億度の温度とかけ算すると、熱いことは間違いないですが、想像を超える熱さではありません。ちなみに、 大型ヘリカル装置 でできた最もエネルギーの高い(熱い)プラズマは、200リットルのお風呂のお湯の温度を2度上げるくらいのエネルギーしかもっていません。だから1億度といっても、 周りのものを溶かしてしまうような力は持っていない のです。(安心してください) ☆だったら、どうしてエネルギー源になるの?という質問が来そうです。 核融合発電所 のプラズマで 核融合反応 が起こったときにできる 中性子 、これがある速度を持っていて、プラズマから外に飛び出してきます。その中性子を ブランケット...

プラズマの周りを囲む壁の材料

☆ 核融合発電 では, 1億度の水素のプラズマが真空の容器の中で磁場によって空中に浮遊 しています。 プラズマ は真空容器の壁に触れていないので、互いに無関係かというと、そうではありません。プラズマから閉じ込められなかった原子核が高速で飛び出してきて、真空容器の壁に衝突します。そして壁の材料を少量ですが弾き飛ばします。 ☆真空容器の中の水素プラズマは1グラムにも満たない重さですが、ここに1%でも壁から弾き飛ばされた不純物原子が入り込むと、温度が極端に下がってしまいます。長時間プラズマを保持しなければならない核融合発電には、不都合な現象です。 ☆そこで、高速粒子がぶつかっても原子核が弾き飛ばされにくいタングステンという金属が壁の材料として有力といわれています。しかしタングステンは、一度プラズマに混入すると、プラズマの温度を下げる効果が大きいという欠点もあります。壁にどのような材料を使うかは、これからの重要な研究テーマとなっています。

1億度のプラズマを閉じこめる容器

☆ 以前、太陽で核融合反応が起こっている原理 を説明しましたが、全く同じことを地球上で起こすことは不可能です。太陽は水素でできているにも関わらず、あれほどの大きさと重さを持っているので、核融合反応を起こすことができています。地球上では、せいぜい大きさが20~30メートルの装置の中で プラズマを作って、核融合反応 を起こします。その方法を簡単に絵に書いてみました。まずプラズマを作る容器の中の空気を抜いて真空にします。容器は空気が入ってくるような孔が開いていない金属製の真空容器です。そしてそこに薄い水素ガス(室温)を入れます。(大気圧の数10万分の1の薄さなので、ほとんど真空です)太陽との大きな違いが、 燃料の水素が真空状態の薄いガス であるということです。次に電子レンジのように電波を使ったりして人為的に暖めます。これで 1億度 に温度が上がり、水素が プラズマ状態 になり、最終的に核融合反応が起こることで発電が可能になります。 ☆このときよく受ける質問が「どうして容器の壁が溶けないのですか」です。実は、 高温のプラズマ は容器の壁に触れていません。プラズマができる 容器の外側には超伝導磁石 があって、磁場の力でプラズマは空中に浮いています。ここが不思議なところです。そしてプラズマと壁の間は真空で熱が伝わりにくくなっています。まるで魔法瓶と同じです。それでも一部の熱が金属の壁にも伝わり温度が上がります。だから特別な材料が使われ、水などで常に冷やします。温度は数百度になりますが、溶けることはありません。もし壁が少しでも溶けるようなことがあれば、プラズマの温度は一瞬で下がり、核融合反応は自動的に止まります。このことも核融合発電が安全な理由のひとつです。

プラズマを磁場で閉じ込める原理

☆ 核融合発電 では, 超伝導磁石 で作った強力な磁場で 1億度 の水素ガスを閉じ込めます。閉じ込めるというのは,真空の容器の中で壁にぶつからないように空中に浮遊させることです。では,どうして磁石で水素ガスを閉じ込めることができるのでしょうか? ☆「鉄」が磁石にくっつくというのは誰もが知っていることです。もう一つ磁石によって力が働き,動かせるものがあります。「電気の流れ」つまり「電流」です。ちょっと難しそうな話ですが,磁石によって電流に働く力を使ったものは身の回りにたくさんあります。洗濯機,冷蔵庫,パソコンのファンに使われているモーター,テレビのブラウン管,スピーカーなどすぐ身近にあります。(分解すると磁石が入っています。) ☆ 1億度の水素ガスはプラズマ状態 と呼ばれ,電子をはぎ取られた原子核が高速で飛び回っています。原子核はプラスの電気を帯びていて,これが走ると電流となり,磁場の中で力を受けます。そして図のように磁場のなかでクルクル回り出します。そして原子核は磁場にまとわりつき,逃げていかないというわけです。はぎ取られた電子も同じように電気を帯びているので、磁場にまとわりつきます。 ☆核融合の研究では,どのような形の磁場(磁石)を作れば,上手くプラズマを磁場の中に閉じ込めておけるかが重要なテーマとなっています。そこで 大型ヘリカル装置ではねじれた形の磁石 を使って,プラズマを閉じ込める研究をしています。

ステラレータ(星の発生装置)

☆私の研究所にある「大型ヘリカル装置」は、ステラレータ(Stellarator)という名前の装置の仲間です。ステラレータは、天文学者でもある米国プリンストン大学のスピッツァー教授が1950年頃に考案しました。この名前も彼がつけたもので、Stellar-「星の」という形容詞がついた天文学者らしい命名です。なんと最初のステラレータ装置は「8の字」の形をしていたそうです。ステラレータはその後、色々な改良が加えられ、京都大学でヘリオトロン(Heliotron、helioは太陽の意)という装置が考案されました。「大型ヘリカル装置」は日本で進化を遂げた世界最大のヘリオトロン装置です。 ☆ステラレータやヘリオトロンと同じドーナツ状のプラズマを作る装置にトカマク(TOKAMAK)があります。こちらは旧ソビエトで考案され、名前もロシア語でTOK(電流)、KAMEPA(容器)、MAGNITNUE(磁気)、KATUSHKI(コイル)の頭文字からきています。これまでトカマクのほうが大きな装置が作られ、プラズマ最高温度の記録も持っています。国際協力で建設が始まろうとしているイーター(ITER)もトカマクです。トカマクで核融合反応の実証が行われ、次に作られる 核融合発電所 については、いろいろな装置の競争になるだろうと考えています。

超伝導プラズマ閉じ込め実験装置「大型ヘリカル装置」

☆下の写真は私の働く研究所にある プラズマ閉じ込め 実験装置、「大型ヘリカル装置(通称LHD)」です。 超伝導コイル をプラズマ閉じ込めに使った実験装置では世界一大きなものです。令和元年度のプラズマ生成実験は10月から開始し、来年の2月まで行う予定です。 ☆ この装置の目的は、核融合反応を起こすことではなく 、模擬燃料(水素、 重水素 、ヘリウム、アルゴン)を使って(実燃料の一つである 三重水素 《トリチウム》は使いません)、 1億度 近いプラズマの性質を科学的に調べることです。国内外の研究者が集まり、 プラズマ の研究を行っています。これまでに1億度を超えるプラズマを作ることに成功しています。また、2,300万度のプラズマを48分間保持することにも成功しました。(平成29年5月追記) ☆研究所の広報見学室では、団体でも個人でもご家族でも見学を受け付けています(平日のみとなりますが)。見学対応スタッフが核融合のことをわかりやすく説明しますので、ぜひ気軽にお越しください。見学には事前の申し込みをお願いしています。詳しくは ホームページ(外部リンク) を参照ください。

世界のプラズマ閉じ込め実験装置が作るプラズマ、百聞は一見にしかず

☆ プラズマ閉じ込め 実験装置は世界中にあります。それらの中では、 1億度 の超高温の プラズマ が作られています。百聞は一見にしかず。インターネット上に公開されている実験装置が作ったプラズマのMovieを紹介します。 ☆ 大型ヘリカル装置 LHD(外部リンク) 日本を代表する超伝導プラズマ閉じ込め実験装置。ヘリカル型と呼ばれるタイプで1分以上のプラズマを作ることが得意。最長記録は54分。 ☆ トールスープラ Tore Supra(外部リンク) フランスの超伝導プラズマ閉じ込め実験装置。トカマク型と呼ばれるタイプで最長6分30秒のプラズマを作りました。 ☆ ジェット JET(外部リンク) イギリスのプラズマ閉じ込め実験装置。世界最大級のトカマク型装置。燃料に 重水素 と 三重水素(トリチウム) を使い、実際に核融合反応を起こす実験をしました。 (注)Movieを見るためには、追加のソフト(無料)が必要になる場合があります。また容量が大きいので、接続環境に気をつけてください。

核融合とプラズマの関係【2】

☆ 前回、プラズマの説明 をさせていただきましたが、もう少し核融合との関係を説明させていただきます。普通の気体は、「原子核」の周りを「電子」が覆っています。核融合反応を起こすために、原子核どうしを衝突させたいのですが、電子が邪魔をしてしまいます。だから電子が剥ぎ取られ(専門的には『電離している』と言います)、原子核が自由に動き回っている「プラズマ」という状態が大変都合が良いわけです。 ☆上の絵のように飛び回っている原子核が衝突すると、ある確率で核融合反応が起こります。その確率を高くするには、衝突するときの速さを大きくする必要があります。だいたい1秒間に1000キロメートルの速さにしなければ反応が起こりません。そんな高速にするために必要なことが、温度を高くするということで、最終的に 1億度 の温度が必要となります。 ☆ 核融合発電 を行うために『 1億度 のプラズマ』が必要な理由が、これでイメージしていただけたでしょうか。

核融合とプラズマの関係【1】

☆ 核融合発電 を実現するためには、その前に水素(実際にはその仲間の 重水素 と 三重水素 )の『プラズマ』を作る必要があります。 ☆さてプラズマってなんでしょうか。プラズマと聞いてすぐに思いつくのが『プラズマテレビ』です。専門家はプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)と呼んでいます。このテレビは赤、緑、青色の1mmに満たない小さい蛍光灯を並べて、それらを光らせています。ここでは「蛍光灯」=「プラズマ」と考えてもらって結構です。プラズマというのは、普通の気体では原子核の周りを電子が覆っているのに対して、 下の絵のように原子核と電子が離れて別々に勝手に動き回っている状態をいいます。この状態は温度が高いと起こります。ということは「蛍光灯」も温度が高いことになります。実はその温度は1万度。「触っても火傷しないの?」という疑問がわきますよね。ところが1万度になっているのは、薄い、ほとんど真空に近い(アルゴン+微量の水銀)の気体です。温度が高くても、その気体が薄いと、触ってもその熱さを思ったほど感じないのです。 ☆話は最初に戻って、核融合発電でもプラズマを作ると言いましたが、プラズマテレビと反対に、巨大な蛍光灯を作っていると想像してください。ただし温度は 1億度 に達するので、壁に触れてプラズマの温度が下がってしまわないように『 磁場のかご 』を使って空中に浮かせる必要があります。

大蛇が絡みついたような「磁場のかご」

☆私の働いている研究所の実験装置についてお話します。研究所は「核融合科学研究所」といい、名前の通り核融合に関する科学的な研究をする所です。研究所には「 大型ヘリカル装置 」という世界最大の超伝導 プラズマ閉じ込め 実験装置があって、全国の大学の共同利用設備としてこれまで21年間運転してきました(2019年現在)。 NIFS: http://www.nifs.ac.jp/kids/kabegami.html ☆上の写真は、その大型ヘリカル装置の「磁場のかご」です。2匹の大蛇が絡み合ったような不思議な形をしています。全体を見るとドーナツ状をしていて、直径が10メートルにもなります。大蛇のように見えるところには強力な超伝導磁石が入っていて「磁場のかご」になります。 ☆このような不思議な形になったのには、色々な研究してみると、高い温度の プラズマ (プラズマについては 次回説明 します)を閉じ込めるのに最適だったからです。この方法は日本で考えられ「ヘリカル型」と呼ばれています。実験では、 1億度 近い水素のプラズマをこの 「磁場のかご」の中に閉じ込める 研究を行っています。(核融合反応は起こしません)