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小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジンと核融合発電との関連

イオンエンジンのイメージ図

☆昨日のニュースで、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」が、1週間後の13日に地球帰還することが確実になったと報道されました。トラブルを乗り越えながらの7年の航行を終えての帰還です。こんな長い距離を航行するわけですから、エンジンがついています。普通エンジンといえば燃焼を使ったものを想像しますが、宇宙では燃焼のための酸素を使うことができません。そこで燃料と電気だけで動く「イオンエンジン」が使われています。つまりキセノンという燃料ガスを電気で加速して噴射する仕組みのエンジンです。「はやぶさ」はイオンエンジンを初めて実用化した探査機なのです。

☆このイオンエンジンですが、核融合発電とも関連があります。一つ目は、プラズマを使っているところです。イオンエンジンでは、まず燃料ガスをプラズマ状態します。そうすると粒子が電気を帯びる(プラスのイオンになる)ので、太陽電池で発電した電気で加速することができるわけです。(上の絵がそのイメージです)核融合発電では、水素ガスを燃料にした高温のプラズマを作って、このプラズマを発電に使います。ということで、プラズマを使うところが同じです。

核融合発電の加熱装置のイメージ図
(加速される粒子はプラスとマイナスの両方の場合があります)

☆二つ目は、イオンエンジンをもっと強力にした装置を、核融合発電では加熱装置に使用します。名前は難しいですが「中性粒子入射加熱装置(NBI)」といいます。この加熱装置で加速した水素の粒子を、今度は加熱したい水素のプラズマに入射して、プラズマの温度を上げていきます。(電気で粒子を加速するところがイオンエンジンと同じです)冷たい水に、ヤカンで沸かした熱い湯を注いでいくようなイメージです。

☆このように最先端といわれる技術は、異分野間でお互いに関連して進歩しています。こうしたことを「技術の波及効果」といいます。他にも核融合研究の技術が身の回りに使われていることが意外にあります。

参考:JAXAのホームページ
http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/about/principle2.html

コメント

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核融合と核分裂のエネルギー比較

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核融合と核分裂の違い

★原子力発電所の事故以来、『核分裂』と言うべきところを『核融合』と言い間違えている発言をよく耳にするので、ここはしっかりと訂正しておきたいと思います。(こんな時期なので黙っておこうと思ったのですが、わたしにも少しは主張する権利があると思い・・) ★原子力発電所で起こる反応は『核分裂(カクブンレツ)』です。ウランのような重たい原子核が分裂して2つに割れることを『核分裂』といいます。(上側の絵)原子力発電所で『核融合』が起こることはありえません。(原子力発電所で起きた水素爆発は、水素と酸素の化学反応で、核融合ではありません)ついでに高速増殖炉(もんじゅ)も『核分裂』です。 ☆『核融合(カクユウゴウ)』は、水素のような軽い原子核が二つくっついて、一つになることです。(下側の絵)今、 世界中で研究 が行なわれている 『核融合』発電 は、水素をくっつけて(融合して)、ヘリウムにする 制御された 核融合反応 を使います。その時、『核分裂』を使うことはありません。 ☆だから、次のことは自明です。 『核融合』発電ではウランを使いません 。だから、 爆発もしない し、 暴走もしない し、連鎖反応もしないし、再臨界もしないし、メルトダウンもしないし、核燃料もないし、核物質もないし、核不拡散問題もないし、高レベル放射性廃棄物もありません。 【水素爆弾との違いは 私の別の記事 を参照ください】 ☆初期(まだ実現まで25~30年くらいかかるけど)の『核融合』発電も、 トリチウム(三重水素) という放射性物質(半減期が12年)を扱うため、100%クリーンとはいえません。しかし、放射能漏れによる潜在的リスク(発電所が保有する放射性物質の強さの合計)は原子力発電の1000分の1以下です。だから 最悪の事故 を考えても、周辺住民が避難するような事態にはなりません。

核エネルギーのはなし

☆『エネルギー』には色々な形があって、私たちはそれらを上手く変換して使っています。例えば風力発電所では、風の力(力学的エネルギー)で羽と発電機を回し、電気(電気エネルギー)に変換して使います。エネルギーには他にも化学エネルギー(例えば石油を燃やす)、光エネルギー、熱エネルギーなどがあり、そのまま使ったり、変換したり、蓄えたりして使っています。 ☆ここでお話しするのは、『核エネルギー』のはなしです。これは原子力発電所で使われているエネルギーの形であり、また将来、 核融合発電所 でも使われるエネルギーの形です。『核エネルギー』と聞くとちょっと尻込みしてしまいますが、「物質そのもの=エネルギー」という、かのアインシュタインが発見したエネルギーです。 ☆上の式は「アインシュタインの式」と呼ばれる有名な式です。Eはエネルギー、mは静止した物体の質量、cは光の速さを表してます。アインシュタインは質量をエネルギーに変換できることを発見したのです。質量をエネルギーに変換する完全な方法は、物質に反物質をぶつけて消滅させることですが、自然界に反物質がほとんど存在しないために、実用性がありません。 ☆ところが、原子核(すべての原子の中心にある粒子)が分裂したり、融合したとき、反応の前と後で質量の合計が少しだけ減少することがわかりました。その減少した質量分だけ、エネルギーが発生します。この「原子核の質量減少から生まれるエネルギー」を一般に「核エネルギー」と呼んでいます。 ☆原子力発電所では、重たい原子核(ウランやプルトニウム)を2つに割った(分裂した)ときに発生する核エネルギーを使います。一方、核融合発電では、軽い原子核(水素の仲間)を2つ融合したときに発生する核エネルギーを使います。現在、発電に利用できる核エネルギーはこの2つだけです。

1億度ってどんな温度?

☆ 核融合発電 では1億度の水素の プラズマ を使いますと見学者に説明すると、びっくりされます。1億度という温度が容易にイメージできないからです。そしてそのことを怖がる人もいます。だからプラズマを温度で表現するのは慎重にしないといけないようです。 ☆気体は目に見えませんが、小さな粒子(分子)がある速度で動き回っています。上の絵のように、色々な方向に飛び回っています。私たちの周りの空気(窒素分子と酸素分子がほとんど)だと秒速300メートルほどです。でも空気の粒子が当たって痛いと思う人はいませんよね。(これって不思議です) ☆さて、気体の温度が高くなると、粒子の速度も速くなっていきます。 プラズマ になって、イオンと電子に分離しても、粒子の速度は温度が高くなるにつれて速くなっていきます。(イオンと電子の速度が同じとは限りません。)例えば「蛍光灯」は身近なプラズマの代表ですが、中の粒子(電子)は、1万度の温度になったときと同じ速度(毎秒600キロメートル)で走っています。『蛍光灯が1万度?』またまた話しがややこしくなってきました。蛍光灯を触っても、火傷するほど熱くはないですよね。 ☆私たちが熱いとか冷たいとか感じるのは、温度だけでなく、(温度)×(粒子の数)が関係しているのです。(熱の伝わりやすさも関係しますが・・)蛍光灯の中に1万度の電子がいても、その数がものすごく少なければ、熱くなりません。実際にものすごく少ないのですが。 ☆さて、核融合発電のプラズマは、粒子(原子核)の数(密度)が空気の10万分の1くらいしかありません。(真空と言ってもよい状態なのです)1億度の温度とかけ算すると、熱いことは間違いないですが、想像を超える熱さではありません。ちなみに、 大型ヘリカル装置 でできた最もエネルギーの高い(熱い)プラズマは、200リットルのお風呂のお湯の温度を2度上げるくらいのエネルギーしかもっていません。だから1億度といっても、 周りのものを溶かしてしまうような力は持っていない のです。(安心してください) ☆だったら、どうしてエネルギー源になるの?という質問が来そうです。 核融合発電所 のプラズマで 核融合反応 が起こったときにできる 中性子 、これがある速度を持っていて、プラズマから外に飛び出してきます。その中性子を ブランケット...