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本の紹介「持続可能なエネルギー『数値』で見るその可能性」

デービッドJ.C.マッケイ著、村岡克紀訳:持続可能なエネルギー「数値」で見るその可能性、産業図書(2010) ☆イギリス・ケンブリッジ大学物理学科の教授が書いたこの本は、前書きに「持続可能なエネルギーについての無駄口(twaddle)を打ち切りたい」と書いているように、「感情的でなく意味のある数値」でエネルギーについて議論しようという目的で書かれたものです。つまり「数値について率直に書いた本」なのです。 ☆実は、彼のホームページでは自由に本文も図も無料でダウンロードすることができます。( http://www.withouthotair.com/ から)でも英語より日本語の方が読みやすいので、少々値段はしますがハードカバーの立派な本を購入しました。 核融合の入門書「フュージョン宇宙のエネルギー」 と訳者が同じで、日本語訳も読みやすいです。 ☆さて今、少しずつ読み進めているところですが、数値が前提の話しになっているので、説得力があります。例えば次のような図が最初のほうにあります。 これは、過去からのCO2濃度のグラフです。1769年はジェームズ・ワットが蒸気機関の特許を得た年です。このグラフにはなんの誇張もなく、産業革命とともにCO2の濃度が増加してることが一目でわかります。 ☆この本を読んで「無駄口」をたたかないようにちゃんと勉強しようと思います。

人類のエネルギー消費が地球温暖化に繋がるか?

☆先週、名古屋で開催されているCOP10に参加し、「生物多様性をまもるため、これからのエネルギー源はどうあるべきでしょうか?」と題したパネルを展示しました。そこで 核融合発電 を含めた未来型エネルギーを提案しました。 ☆その中で次のような質問を受けました。「もし環境負荷の小さなエネルギー源が開発されたとしても、エネルギーを使うこと自体で熱が発生し、地球温暖化に繋がらないのか」という質問です。その時はうまく答えられず、少しお茶を濁してしまいました。 ☆そこで計算してみました。地球の人口が100億人になったとします(今は69億人)。そして全ての人が、現在の日本人の生活レベルでエネルギーを消費したとします。(具体的には128キロワット時(kWh)/人/日、電力、運輸、産業、発電ロスの総てを含めたエネルギー)このエネルギー消費が全て熱に変わり、地球全表面から放出されたとします。(地球の表面積で割り算するということです)その値は0.1ワット/平方メートルとなりました。この数字が大きいか小さいかという議論になります。 ☆地球表面が太陽から浴びている熱は238ワット/平方メートルです。そして11年周期の太陽エネルギーの変動は0.25ワット/平方メートルです。さっき計算した数字は、無視できるとは言えませんが、気候変動に影響を与えるような大きさではないようです。(でもこれくらいが持続可能の限界かもしれません) ☆ただし、(都市のヒートアイランドのように)局所的に温度を上げてしまう可能性があるので、これについてはまた記事にしたいと思います。 (参考:デービッドJ.C.マッケイ、「持続可能なエネルギー」産業図書)

核融合発電の優位性〜燃えかす編〜

☆ 前回、核融合発電の資源 は 重水素 と リチウム ですと説明しました。さて、 炉 の中で 核融合反応 の結果生成されるものは、今度は「ヘリウム」です。この生成物をここでは「燃えかす」と呼ばせてもらいます。ヘリウムは全く無害な気体です。大気に放出しても、軽い気体なので、ゆっくりと宇宙の彼方に遠ざかっていきます。地球環境になにも影響を与えないのです。 ☆火力発電では、化学反応で二酸化炭素が生成されます。これは温室効果ガスであり、現在、地下への貯蔵も検討されています。一方、原子力発電では、核分裂反応で生成される物質が強い放射性を持つため、長期間の地下貯蔵が必要となります。 核融合発電 では、このような地下貯蔵を考えないといけないような燃えかすが発生しないのです。 ☆廃棄物には、燃えかすの他に、設備から出てくる二次的な廃棄物があります。核融合発電の場合は、放射化した金属の廃棄物(すべてが低レベル放射性廃棄物)が発生します。ですが、これらは廃炉後一定期間保管し、放射能が弱くなったのちに、リサイクルする計画です。放射化しにくい特殊な金属を使うので、捨てるのはもったいないです。(詳しくは 以前の記事 を参照ください。)

核融合エネルギーは温室効果ガス(二酸化炭素)を排出しません

☆イタリア、ラクイラで開催されていたサミットで、G8は温室効果ガスの排出を2050年までに80%以上削減することを、宣言に盛り込みました。大変素晴らしい宣言です。 ★ですが、どのようにしてここまで削減するのでしょうか。石油などの化石燃料に依存しない社会をこれから40年で作り上げる意気込みが先進国にはあるのでしょうか。 ☆ 核融合発電 は、水素が燃料で、排出するのはヘリウムですから、温室効果ガス(二酸化炭素)を排出しません。原子力エネルギーも二酸化炭素を排出しませんが、燃料がウランという化石燃料なので、持続可能なエネルギーとはいえません。つまり、太陽光発電、風力発電、地熱発電などとともに核融合発電が、持続可能かつ二酸化炭素を排出しないエネルギー源と言えます。40年後に向けて持続可能なエネルギー源を開発・普及する義務を先進国は果たさなければなりません。