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本の紹介「図解でよくわかる核融合エネルギーのきほん」

  本当に久しぶりに「核融合」に関する解説書が出版されました。「図解でよくわかる核融合エネルギーのきほん」(誠文堂新光社)です。これまでの解説書と違って、特定の著者が書いたものではなく、文部科学省、研究機関、大学が協力してまとめられたもので、内容に偏りがなく正確に書かれています。かと言って難しくはなく、これまでの解説書の中では最も分かりやすいものです。各項目が見開きに纏められ、右ページが図解になっています。(ある意味、どこから読んでも大丈夫!)また科学的な内容だけでなく、経済面や教育面(そして核融合ロケットまで)についても総合的に書かれています。所々にあるコラムも興味深く読むことができます。核融合について知りたくなったら最初に読むのに最適な入門書だと思います。 余談ですが、このブログにある図も引用されましたよ(P71)。

本の紹介「持続可能なエネルギー『数値』で見るその可能性」

デービッドJ.C.マッケイ著、村岡克紀訳:持続可能なエネルギー「数値」で見るその可能性、産業図書(2010) ☆イギリス・ケンブリッジ大学物理学科の教授が書いたこの本は、前書きに「持続可能なエネルギーについての無駄口(twaddle)を打ち切りたい」と書いているように、「感情的でなく意味のある数値」でエネルギーについて議論しようという目的で書かれたものです。つまり「数値について率直に書いた本」なのです。 ☆実は、彼のホームページでは自由に本文も図も無料でダウンロードすることができます。( http://www.withouthotair.com/ から)でも英語より日本語の方が読みやすいので、少々値段はしますがハードカバーの立派な本を購入しました。 核融合の入門書「フュージョン宇宙のエネルギー」 と訳者が同じで、日本語訳も読みやすいです。 ☆さて今、少しずつ読み進めているところですが、数値が前提の話しになっているので、説得力があります。例えば次のような図が最初のほうにあります。 これは、過去からのCO2濃度のグラフです。1769年はジェームズ・ワットが蒸気機関の特許を得た年です。このグラフにはなんの誇張もなく、産業革命とともにCO2の濃度が増加してることが一目でわかります。 ☆この本を読んで「無駄口」をたたかないようにちゃんと勉強しようと思います。

本の紹介「Build the Future」

西澤丞著:Build the Future、太田出版 (2010) 先日発売された写真集「Build the Future」に、全国の核融合研究施設で撮影された写真が掲載されました。なんと表紙は 大型ヘリカル装置 の内部です。写真集は核融合研究施設、加速器研究施設、外郭放水路の三部構成です。私の知る限り核融合研究施設を撮影した写真集はこれが初めてです。その著者の目の付け所にも驚きますが、中を見ると著者独特の視点で写真が撮られています。私にとっては見慣れた部品や光景が、写真になるととてもカッコよくなっているのです。クールな写真は最先端科学と社会を繋ぐ新しい手法だと感じました。

本の紹介「戸塚教授の『科学入門』」

戸塚洋二著:戸塚教授の「科学入門」E=mc2は美しい!、講談社(2008) ☆本書の冒頭にある「最後のインタビュー」。先生が亡くなられる直前に、東大立花ゼミの学生がインタビューした内容が収録されています。( 暫定版はこちら )そこには若い人への強いメッセージがあります。「僕には嫌いな言葉がひとつある。それは『子孫に負を残すな』っていう言葉。僕は『どんどん残せ』って言うんです。放射性廃棄物の処理にしても、環境問題にしても、エネルギー・食料危機にしてもね。(本文から抜粋)」意外なメッセージに聞こえますよね。でも先生は、若い人はどんどん頭が良くなっているはずだし、解決できない問題はないと明言されています。そして、若い人にこれらの負を解決してほしいという強い願いが込められいます。 ☆核融合で発電ができるのが、何年後かわかりませんが、ロードマップが長すぎて自分の仕事に対して無力感を感じることがありました。でも先生の言葉を聞いて、若い人に任せれば大丈夫、絶対に完成すると思えるようになりました。 ☆第2章からは先生のブログ「科学入門」です。難し〜い科学が、ぐーんと身近に感じられるようになります。

本の紹介「フュージョン 宇宙のエネルギー」

G.マクラッケン、P.ストット著:フュージョン 宇宙のエネルギー、シュプリンガー・ジャパン(2005) ☆これまで連載で紹介した本は新書なので、千円以下で購入できます。今回紹介する本は、単行本なので、三千円します。ちょっと気楽に買える本ではありませんが、本当はこの本が入門書として一番のお勧めです。 ☆話題が広範囲に渡り、物語風に書かれているので、科学読み物としても楽しめます。核融合(フュージョン)研究のことはもちろん、星のこと、さらには低温核融合のことまで、色々なエピソードを交えて書かれています。私は低温核融合に関する書籍を一冊も持っていませんが、この本に書かれていることを唯一の情報源としています。「悲しいエピソード」として。 ☆これまでと同様、核融合発電の将来展望についての記述を抜粋します。「・・技術開発研究には粘り強い努力が必要です。・・どれくらい緊急に必要とするかにかかっていますが、開発には大体20年がかかるでしょう。」やはり、「粘り強い努力が必要」というところが、核融合発電実現の鍵だと思いますね。

本の紹介「新・核融合への挑戦ーいよいよ核融合実験炉へ」

狐崎晶雄、吉川庄一著:新・核融合への挑戦、ブルーバックスB1404(2003) ☆前々回に紹介したブルーバックス「核融合への挑戦」の全面改訂版です。前の「核融合への挑戦」では、最初の2章を使ってエネルギーのことを説明し、第3章から核融合の話に入りました。一方、本書は第1章から超高温プラズマの話で始まります。だから、一般市民向けというより、これから核融合の勉強をしたい、または、勉強しようとする人に最適です。前に紹介した2冊と同様、難しい数式もありません。 ☆最後に「未来への展望」という章があるのですが、もう少し若い人に夢(勇気)を与えるような内容を期待しました。中でも「核融合発電はいつできるのか」という節では、「政治、そして予算が関係することであり・・・科学的な本の内容としてはふさわしくない・・」と書かれています。もう少し楽観的に(期待を込めて)書かれていても良かったかなと思います。 ☆余談ですが、昨年、中国の核融合研究をしている研究所の所長さんと話す機会がありました。そこで「核融合発電はいつできるのか」という私の問いに所長さんは「15年後」と言い切りました。(短時間の発電実証ですが)日本では30年以内と答えるのが普通なので、本当に驚きました。これが本当なら、中国に先を越されてしまいます。

本の紹介「核融合エネルギー入門」

ジョゼフ・ヴァイス著 本多力訳:核融合エネルギー入門、文庫クセジュ(2004) ☆前の記事で紹介したブルーバックス「核融合への挑戦」が核融合についての入門書の第一であるとすると、第二は、この新書「核融合エネルギー入門」でしょうか。原著はフランス語ですが、実際に核融合に携わっている方が訳されているので、日本語でもとても読みやすくなっています。 ☆紹介した二つの新書は、一般向けに書かれたものなので、数式や専門的な記号や単位が出てきません。またエネルギー問題と将来のエネルギー開発の展望が、著者の視点から、多くのページを割いて書かれているので、その部分だけでもとても参考になります。 ☆逆に二つを比べると「核融合エネルギー入門」のほうが、2004年初版なので、情報が最新で、かつ現実的です。現実的と言ったのは、核融合エネルギーの安全性、コスト、技術面の難しさなどが、現状の技術に合わせて書かれています。注意してほしいのは、フランス人向けに書かれた本なので、世界各国の研究状況には触れられていません。当然ですが、日本のことにも。その辺は訳者が後書きでフォローしています。 ☆本書の最後から一文を紹介します。「(核融合エネルギーの)産業規模での実現は、今世紀前半には行われるだろう。そのころには、われわれの消費による天然資源の枯渇と気候温暖化を強く感じるようになっているはずである。」

本の紹介「核融合への挑戦ー無限のエネルギーを求めて」

吉川庄一著:核融合への挑戦、ブルーバックスB-228 (1974) ☆私が核融合に興味を持ったのは、高校生の時にこの本に出会ったからです。初版は1974年ですから、もう36年も前の本です。 ☆さて、当時に何に一番驚いたかというと、第1章に書かれていた「今の需要がそのままふえてゆくとすると、今世紀中に全部石油をつかいつくすことになると考えるのがもっとも妥当であろう。」という一文。そしてこの本の最後の一文、「科学には国境がない。世界のどこの国にしろ、核融合炉の炉心プラズマの製作に成功すれば、人類の最大の悩みであるエネルギー源の問題は解消できるのだ。」です。高校生の私は、石油が無くなるという危機感と、科学の力で人類を救うぞという使命感を持った記憶があります。まあ、それから紆余曲折ありましたが、今核融合の研究をしています。 ☆でも今になって思うと、「今世紀中」(つまり20世紀)には石油はなくなりませんでした。(値段は高くなっていますが)「今世紀中」といわれた核融合発電の完成も、まだ少し時間がかかりそうです。ちょっとだまされたという気もしないではありませんが、この本を読んだときの気持ちは失っていません。 ☆この本は絶版になっていますが、ネット(Amazonなど)で中古で購入することができます。若い人にもぜひ読んでほしい本です。36年前に書かれたものですが、核融合の入門書として今でも最適だと思います。なお、本書は2003年に全面改訂されて「新・核融合への挑戦」として発刊されています。こちらの紹介は別の機会にしたいと思います。 【追記2010.11.21】 ★吉川庄一先生が2010年11月4日に亡くなられました。76歳でした。ご冥福をお祈りいたします。