吉川庄一著:核融合への挑戦、ブルーバックスB-228 (1974)
☆さて、当時に何に一番驚いたかというと、第1章に書かれていた「今の需要がそのままふえてゆくとすると、今世紀中に全部石油をつかいつくすことになると考えるのがもっとも妥当であろう。」という一文。そしてこの本の最後の一文、「科学には国境がない。世界のどこの国にしろ、核融合炉の炉心プラズマの製作に成功すれば、人類の最大の悩みであるエネルギー源の問題は解消できるのだ。」です。高校生の私は、石油が無くなるという危機感と、科学の力で人類を救うぞという使命感を持った記憶があります。まあ、それから紆余曲折ありましたが、今核融合の研究をしています。
☆でも今になって思うと、「今世紀中」(つまり20世紀)には石油はなくなりませんでした。(値段は高くなっていますが)「今世紀中」といわれた核融合発電の完成も、まだ少し時間がかかりそうです。ちょっとだまされたという気もしないではありませんが、この本を読んだときの気持ちは失っていません。
☆この本は絶版になっていますが、ネット(Amazonなど)で中古で購入することができます。若い人にもぜひ読んでほしい本です。36年前に書かれたものですが、核融合の入門書として今でも最適だと思います。なお、本書は2003年に全面改訂されて「新・核融合への挑戦」として発刊されています。こちらの紹介は別の機会にしたいと思います。
【追記2010.11.21】
★吉川庄一先生が2010年11月4日に亡くなられました。76歳でした。ご冥福をお祈りいたします。
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