スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

ラベル(安全性)が付いた投稿を表示しています

核融合発電の仕組み【2021改訂版】

 ☆下の絵は、核融合発電の仕組みを簡単に書いたものです。核融合発電の中心にあるのは「核融合炉」です。(火力発電の「ボイラー」、原子力発電の「原子炉」に相当します)核融合炉の中では、水素の同位体( 重水素 と 三重水素 )を 真空状態に近い希薄なガス にし、 1億度 まで加熱します。これを物質の第4の状態である 『プラズマ』 と呼びます。最も温度の高いプラズマの中心部では 核融合反応 が起きていて、反応で発生したエネルギーを熱として取り出して、水を(超臨界圧の)蒸気に変えます。そしてこの蒸気でタービンを回し発電します。蒸気はもう一度海水で冷やして水に戻します。ここまでの話では、エネルギーの源が違うだけで、火力発電、原子力発電とおおまかな仕組みは同じです。(次世代の核融合発電では効率の高い 直接発電 も考えられています) ☆火力発電や原子力発電では燃焼している燃料から直接熱が発生し、その熱を直接取り出すことができます。ところが核融合炉の燃料部分であるプラズマは、温度は高いものの 希薄である ため、ここから直接熱を取り出せるわけではありません。核融合炉ではまず、核融合反応で発生した高速で飛び出してくる素粒子、つまり 中性子 を周りを覆った厚さ1mの ブランケット と呼ばれる部分で減速させ捕獲します。ブランケットの中で中性子は速度を落とし、その落ちた速度に相当するエネルギーが熱に変わります。(この時のプランケットの温度は500度ぐらい)この中性子の運動エネルギーが熱エネルギーに変わるところが、従来の発電と異なる点です。 ☆材料(主に金属)に中性子が当たると、機能が劣化したり、 放射化(普通の材料が放射能を持つように変化) したりします。中性子が当たっても丈夫な材料、さらに放射化しにくい材料の研究が現在精力的に行われています。そして最初の核融合炉に使うことができる材料の候補もすでに見つかっています。中性子はエネルギーの源なので、ほとんどは核融合炉から外に逃げないようになっています。でも完全ではありません。当然のこととして、 生体遮蔽(作業者や周辺の住民に中性子を含む放射線が当たらないようにすること) が絶対に必要ですが、その技術はすでに確立されています。中性子は、プラズマが消えれば発生しません。 プラズマを消す手段 はいくつかあって、簡単に消すことができます。 ☆ プ...

核融合科学研究所の重水素実験に対する誤った情報の指摘

  核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の 大型ヘリカル装置 (LHD)で、 重水素ガス (無害)を用いた プラズマ 生成実験が開始されました。普通の水素ガスを用いるより重水素ガスを用いた方が、プラズマの温度が上がると言われていて、数年以内には、装置としての目標である 1億2,000万度 のプラズマ生成を達成すると思います。(現在の水素ガスの実験での達成値は9,400万度)この実験は、将来の 核融合発電 を実現するために必要不可欠なものです。  この実験は 基礎段階の学術的なもの で、 核融合反応を起こす(エネルギーを発生する)ことが目的ではありません が、重水素同士が核融合反応( D-D反応 )が起きる確率はゼロではなく、実験に使った重水素のごく僅かが核融合反応を起こします。その時に放射性物質である 三重水素(トリチウム) と放射線である 中性子 が発生します。トリチウムは回収、中性子はコンクリート壁(もちろん天井もコンクリート)で遮蔽という安全対策をとり、もちろん法令を遵守して実験を行います。また 1億度 と言っても、 周りの壁が溶けることはありません 。  しかし、この実験には反対運動も根強く、広く市民に説明し、地元自治体の同意を得、実験を開始するまでに、約10年を費やしました。それでも、実験を開始する時点で、ネット上に誤った情報が多く流れ、市民の皆様に不安を与えてしまいました。もし、実験に不安に感じておられる方で、偶然この記事を見られたとしたら、最近のネット上の情報の誤りを指摘しますので、ぜひ参考にしてください。 民間の放射線計測システムで 高線量(例えば2.6μSVとか)が観測されたとありますが、重水素実験とは全く関係ありません。 なぜなら、研究所敷地内で高線量は観測されていないからです。研究所敷地内の環境放射線モニタリングシステムのデータを見ていただければ一目瞭然です。実験が開始されても値は変化していません。 https://sewebserv.nifs.ac.jp/map.php  (外部リンク)もしくは  https://sewebserv.nifs.ac.jp/past.php  (外部リンク)(なお、雨が降ると値が少し上昇しますので、ご注意ください。ガンマ線では200、中性子線では20という数字が自然の...

核融合発電のプラズマが爆発しない理由

☆ 核融合発電 では、 1億度 の プラズマ (真空に近い希薄な水素ガス)を使うので、爆発するのではという心配を皆さん持つようです。(核爆発を連想するのかもしれません)でも安心してください。「原理的」に爆発しないのです。 ☆爆発というと、一気にエネルギーを発生して、火の玉のように温度が上がって、爆風を伴って周りのものを吹き飛ばすというイメージですよね。核融合発電のプラズマは、運転条件の(例えば)1億度よりさらに温度を上げることが、その原理からして不可能なのです。だから一気にエネルギーを発生したり、温度が勝手に上がっていくというようなことが起こりません。また 1億度のプラズマが周りの金属を溶かすようなこともありません 。 ☆どうしてかもう少し説明します。 プラズマは希薄すぎるため、壁に当たると温度が下がってしまう ので、目に見えない 磁場のかご(籠) を使って閉じ込めます。(上の左の図)広がろうとするプラズマを磁場の力で押さえ込んでいる感じです。この広がろうとしたり、押さえ込もうとしたりする力のことを「圧力」と呼びます。ここでプラズマの圧力は「温度」×「粒子の数(密度)」に比例し、磁場の圧力は 超伝導電磁石 が作る磁場の強さによって決まっているというのが味噌になります。そしてプラズマの圧力と磁場の圧力が上手く釣り合ってこそ、初めて運転ができるのです。(その圧力は、核融合発電の場合、数気圧ですので、爆発することはありません。)このバランスが崩れると、プラズマの温度は一瞬に下がってしまいます。 ☆ここで温度が突然上がったらどうなるか考えてみます。温度が上がると、プラズマの圧力が上がります。一方、磁場の圧力は変わりません。(磁場の強さは一定ですから)これでは上手く閉じ込められなくてバランスが崩れ、(シャボン玉が割れるような感じで)プラズマの温度が瞬時に下がってしまいます。また、燃料を入れすぎた場合を考えてみます。今度は粒子の数が増えて、やっぱりプラズマの圧力が上がります。磁場の圧力は変わりません。今度も上手く閉じ込められず、プラズマの温度が下がってしまいます。このように一定の磁場の圧力によって、温度や密度が異常に上昇することを抑制しているのです。バケツの水で例えると、いくら沢山の水(プラズマの圧力)を入れようとしても、バケツの大きさ(磁場の圧力)が決まっ...

もし1億度のプラズマが金属容器に当たったら?

核融合発電 では、 1億度 の水素ガス( プラズマ と呼びます)を作ることが必要です。でも、「 1億度 の水素プラズマが 金属容器 に当たるとドロドロに溶けてしまうのではないか」というご質問をよく受けます。ここでは、(厳密さより分かりやすさを優先して)それにお答えしたいと思います。 まず、通常の運転では、プラズマは目に見えない 磁場のカゴ で閉じ込められ(浮遊し)、金属容器の壁には当たっていません。(離れていて、間は真空)だから壁が溶けたりはしません。 でも、磁場のカゴが急になくなって・・・と心配になりますよね。 では、装置として実物のある 大型ヘリカル装置(LHD) を例にしてお答えします。水素プラズマの周囲にある金属容器の重さは65トン(6500万グラム)です。これに対して、1億度の水素プラズマの重量はたったの0.02グラム。これは金属容器の重さの30億分の1という小ささです。さて、コップの水(室温)に、100度のお湯を一滴入れたとして、お湯の温度は変わるでしょうか。また、重たい鉄板にお湯を一滴垂らしてみたらどうでしょうか。コップの水や鉄板の温度はほとんど変わりません。これと同じで、65トンの金属容器に0.02グラムの水素プラズマが当たっても(それがたとえ1億度であっても)溶けたりはしません。あまりにも重さが違いすぎるのです。

超伝導磁石が爆発するわけがない

★日本で出版されたいくつかの書物に、「 核融合発電 のための超伝導磁石はTNT火薬○○トンのエネルギーを蓄積しているので『爆発』するかもしれない」と書かれています。中には、「日本物理学会編」というものもあります。私は長い間、超伝導磁石の研究をしていますが、超伝導磁石自身が爆発したというはなしを聞いたことがありません。(当然、永久磁石でも) ☆そもそも爆発といのは、物体(ガスなど)が一瞬で膨張して、周りに爆風などをもたらすことです。さて、超伝導磁石は電磁石です。導線を巻いて電流を流すコイルです。(磁気エネルギーを持っているので、外側に膨張しようとする電磁力が働いているのは事実です)そこで、少し膨張させてみましょう。導線は切れて、電流は流れなくなります。それ以上電磁力は働かず、膨張はしません。(もし、導線がゴムのように伸びるのであれば、一瞬で膨張させることもできるかもしれませんが)回りくどい言い方かもしれませんが、 超伝導磁石を爆発させることは不可能 です。 ★色々な本が書店に並んでいますが、(当然ですが)全て真実が書かれているわけではありません。あまりにも極端な(人を脅かすような)比喩表現には注意が必要だと思います。そんな本が売れたりするのでしょうが・・

発電所が使う燃料と廃棄物の重さ比較

先日、 核融合発電 についての講演をしましたので、その発表スライドからいくつかピックアップしてみました。 ☆最初は、100万キロワットの発電所1基が、一日に使う 燃料 の重さと大きさの比較です。 石炭火力で使う石炭の量がいかに大きいかわかります。これを輸入しているわけで、輸送時の消費エネルギーも無視できません。 原子力発電の燃料であるウランは、核物質であるため、セキュリティが厳しいのが問題です。 核融合発電 の燃料は軽く、セキュリティの問題もありません。 ☆次は廃棄物の重さ。やっぱり石炭火力からでる二酸化炭素の量はただごとではありません。原子力発電の廃棄物は、みなさんご存じのとおり、捨てる場所さえ決まっていません。 核融合発電からの廃棄物はヘリウムで無害です。量も少なく、温室効果ガスでもありません。これだけでも核融合発電は十分な優位性を持っていると思います。 (補足)核融合発電は、発電所の中で循環して使う 三重水素(トリチウム) の放射能と中性子による 金属材料の放射化 があるので、全くの無害ではありません。しかしその潜在的なリスクは、原子力発電より数桁小さく、100年で減衰します。

核融合発電の起動に核分裂炉は必要ありません

私はWikipedia日本語版を見ないことにしています。英語版と全く内容の質が違うからです。でも稀に気になって核融合についての記述を確認してしまいます。(ググるとWikipediaはいつも上位にいますから)そしていつも意図の分からない記述を見つけてしまいます。 例えば、【核融合炉】についてのこんな記述。これは、この部分は最近追記されたものです。 『しかし、核融合反応を起こすための起電力を得るために、核分裂炉が必要である。ただし、臨界プラズマ条件を満たして核融合反応が進行すれば、自己点火条件に移行させて、その時点で核分裂炉は不要となる。』( http://ja.wikipedia.org/wiki/核融合炉 より引用) これは間違いです。もちろん2ヶ所の「核分裂炉」を「電気」か「電力」に替えれば、ほぼ問題ない文章になります。電気(電力)が得られればどんな発電方法(火力発電でも、自然エネルギーでも、将来なら核融合発電でも)でもよいのですが、ここで敢えて「核分裂炉」と限定した意図が分からないのです。 核兵器(水爆) を連想させようとした悪意はないと信じていますが・・。 ここで、ちゃんと訂正しておきます。(Wikipediaの訂正の仕方は分からないから) 『 核融合反応を起こすための起電力を得るために、核分裂炉(今の原子力発電)は必要ありません。 』 とはいっても、 核融合発電 の起動電力は、数10万キロワットと考えられています。発電所1基分とはいかないまでも、かなり大きな電力が短時間( プラズマが点火 するまで)に必要となります。一般の電力系統から受電すると、電力需要に大きな変動を与えることになります。ここはまだ検討の余地がありそうです。 (8/24追記)Wikipediaから上記の記述が削除されていました。この記事も必要ないことになりますが、まだ誤解もあるかと思うので、残しておきます。

核融合と核分裂の違い

★原子力発電所の事故以来、『核分裂』と言うべきところを『核融合』と言い間違えている発言をよく耳にするので、ここはしっかりと訂正しておきたいと思います。(こんな時期なので黙っておこうと思ったのですが、わたしにも少しは主張する権利があると思い・・) ★原子力発電所で起こる反応は『核分裂(カクブンレツ)』です。ウランのような重たい原子核が分裂して2つに割れることを『核分裂』といいます。(上側の絵)原子力発電所で『核融合』が起こることはありえません。(原子力発電所で起きた水素爆発は、水素と酸素の化学反応で、核融合ではありません)ついでに高速増殖炉(もんじゅ)も『核分裂』です。 ☆『核融合(カクユウゴウ)』は、水素のような軽い原子核が二つくっついて、一つになることです。(下側の絵)今、 世界中で研究 が行なわれている 『核融合』発電 は、水素をくっつけて(融合して)、ヘリウムにする 制御された 核融合反応 を使います。その時、『核分裂』を使うことはありません。 ☆だから、次のことは自明です。 『核融合』発電ではウランを使いません 。だから、 爆発もしない し、 暴走もしない し、連鎖反応もしないし、再臨界もしないし、メルトダウンもしないし、核燃料もないし、核物質もないし、核不拡散問題もないし、高レベル放射性廃棄物もありません。 【水素爆弾との違いは 私の別の記事 を参照ください】 ☆初期(まだ実現まで25~30年くらいかかるけど)の『核融合』発電も、 トリチウム(三重水素) という放射性物質(半減期が12年)を扱うため、100%クリーンとはいえません。しかし、放射能漏れによる潜在的リスク(発電所が保有する放射性物質の強さの合計)は原子力発電の1000分の1以下です。だから 最悪の事故 を考えても、周辺住民が避難するような事態にはなりません。

核融合発電の優位性〜燃えかす編〜

☆ 前回、核融合発電の資源 は 重水素 と リチウム ですと説明しました。さて、 炉 の中で 核融合反応 の結果生成されるものは、今度は「ヘリウム」です。この生成物をここでは「燃えかす」と呼ばせてもらいます。ヘリウムは全く無害な気体です。大気に放出しても、軽い気体なので、ゆっくりと宇宙の彼方に遠ざかっていきます。地球環境になにも影響を与えないのです。 ☆火力発電では、化学反応で二酸化炭素が生成されます。これは温室効果ガスであり、現在、地下への貯蔵も検討されています。一方、原子力発電では、核分裂反応で生成される物質が強い放射性を持つため、長期間の地下貯蔵が必要となります。 核融合発電 では、このような地下貯蔵を考えないといけないような燃えかすが発生しないのです。 ☆廃棄物には、燃えかすの他に、設備から出てくる二次的な廃棄物があります。核融合発電の場合は、放射化した金属の廃棄物(すべてが低レベル放射性廃棄物)が発生します。ですが、これらは廃炉後一定期間保管し、放射能が弱くなったのちに、リサイクルする計画です。放射化しにくい特殊な金属を使うので、捨てるのはもったいないです。(詳しくは 以前の記事 を参照ください。)

核融合発電の環境影響と安全性【3】

☆次は燃料とその燃えかす(灰)について考えてみます。 核融合発電 における燃料は 重水素 とリチウム( 三重水素 をつくる原料)です。どちらも海水から採取します。100万キロワットの発電所で1日で使う 重水素 は1キログラム、リチウムは10キログラムです。そして重水素にもリチウムにも毒性はありません。同じ100万キロワットの原子力発電所では1日に500キログラムの天然ウランが、石炭火力発電所ではなんと1万トンの石炭が必要です。さらに核融合発電の燃料は、爆発したり、テロリストによって悪用されることもありません。(参考文献:ジョセフ・ヴァイス著「核融合エネルギー入門」白水社) ☆そして燃えかすは、ヘリウムです。ヘリウムにも毒性は全くありません。原子力発電では高レベル放射性廃棄物ができますし、火力発電では地球温暖化に影響を与える二酸化炭素が燃えかすとして残ります。 ☆このように燃料と燃えかすだけを見ると全くクリーンなエネルギー源と言えるわけです。発電所の中で循環して使う 三重水素(トリチウム) の放射能と中性子による金属材料の放射化を考えると完全にクリーンとは言えないことはこれまで説明してきたとおりですが、その環境影響は小さなものです。

核融合発電の環境影響と安全性【2】

☆ 核融合発電 では中性子のエネルギーを利用するので、装置に使われる金属は中性子が当たって放射能(放射線を出す性質)を持つ放射性物質になります。これだけ聞くとものすごく環境影響があるように感じます。しかしその放射性物質の性質を理解してください。『 核融合発電 でできる放射性物質は100年で消失する』ものがほとんどで、後世にまで廃棄物を残しません。これが原子力発電との根本的な違いです。(原子力発電で発生する高レベル放射性廃棄物は「地層処分」されますが、1万年以上の管理が必要です。) ☆核融合発電の放射性廃棄物(最終的にリサイクルできるので、廃棄物ではないという考えもあります)の量の減少を説明するために、ヨーロッパの研究者はたびたび石炭火力発電との比較を行います。石炭にはウランとトリウムという放射性物質が微量ですが含まれます。このウランとトリウムが環境に放出されても問題にされることはありません。環境影響が小さいからです。ですが、これらの放射性物質は1億年たっても消えることはありません。(地下にずっと残っていたのですから) ☆さて、核融合発電で発生する放射性廃棄物の危険性は、廃炉後100年経つと石炭火力発電で放出された放射性廃棄物の危険性と同等になります。極端な例を挙げましたが、石炭火力発電の放射性廃棄物の環境影響が無視できるように、100年待てば核融合発電の放射性廃棄物の環境影響も無視できるまで減少することを意味します。しかも核融合発電の廃棄物は(金属なので)環境に放出されることなく、生活圏から隔離され保管されます。(参考文献:ジョゼフ・ヴァイス著「核融合エネルギー入門」白水社) ☆現状のエネルギー源に100%クリーンな環境影響のないものは存在しません。「再生可能エネルギー」にしても何らかの環境影響があります。利点、欠点を理解し、社会に導入していくのがよいと思います。

核融合発電の環境影響と安全性【1】

★ 『 核融合発電 』については、どうしても危険じゃないかというイメージを持たれていると思います。だから、いくつかの記事で核融合発電の安全性についてお話したいと思います。 ☆核融合発電の安全性を研究しているところでは「最悪の事故を仮想」したシミュレーションを行っています。その結果は『どんな最悪事故を仮想しても周辺住民の避難が必要な事態にはならない』です。この結果は核融合発電の安全性の高さを示すものです。また発電所の立地条件を緩和します。(人口過密地近傍の埋め立て地に建設が可能です) ☆最悪事故の例を挙げます。 1億度 のプラズマを閉じこめている金属壁の冷却が止まってしまい、そのまま何もせずに放置します。壁の温度が1000度近くにまで上昇しますが、溶けてしまうことはありません。地震や火事を想定し、燃料である放射性物質の 三重水素(トリチウム) が外部に放出される事故を想定しても、周辺住民が避難するような危険な状態にはなりません。(外部リンク: ヨーロッパの核融合発電所概念設計報告書 (英文)) ☆このような最悪事故は何重もの安全装置で回避するのは当然のことですが、最悪事故を仮想しておくことも社会に受け入れてもらうためには必要な研究です。これはどのようなエネルギー源についても言えることです。

核融合発電で使うトリチウムのはなし

☆ 核融合発電 の安全性について、「 爆発(暴走)しない 」「 中性子による事故は起こらない 」と説明してきましたが、もう一つ忘れてならないのは 燃料 に使われる三重水素(別名トリチウム)のことです。トリチウムは、水素の仲間(同位体)で、水素とほぼ同じ化学的性質を持っていますが、ベータ(β)線という放射線を出す放射性物質です。このβ線の力は弱く、空気中では1センチメートルほど飛ぶと止まってしまいます。またアルミ箔で止めることもできます。このようにトリチウムが隔離されていれば、怖がることはありません。しかし、トリチウムを体の中に摂取すると少なからず影響があります。(その危険性は同じ放射能で比較すると,原子炉でできる放射性物質,ヨウ素の1200分の1、プルトニウムの14000分の1と小さいですが)つまりトリチウムは管理・隔離する必要があるということです。 ☆ 核融合発電所 では、 重水素 とトリチウムを燃料として消費し、核融合反応で発生する中性子を リチウム (トリチウムとリチウムは別の元素です)に当ててトリチウムを生産するという循環サイクルを使います。ですから、トリチウムは最初の運転に必要なだけで後は増えも減りもしません。その量はだいたい数キログラムと予想されます。(なお、原子炉の燃料は約100トンなので、それに比べると桁違いに少ないです。)管理することなく外部に放出することはありませんし、どうしても分離回収できなかったトリチウムは、法令基準を守って外部に放出します。(法令基準は環境に影響を与えないほど小さいものです) ☆核融合発電が完成するまでにはまだ時間があるので、トリチウムを何重にも隔離する方法、トリチウムを除去回収する技術を重点的に研究する必要があります。核融合発電の安全性を社会に理解してもらうことが、技術開発以上に重要であることは言うまでもありません。

核融合発電で使う中性子のはなし

☆ 核融合発電 では、炉の中で中性子が使われることをお話しましたが、この中性子を正しく怖がってほしいと思っています。1999年9月30日のJCOでの「臨界事故」で、2名の方が亡くなりました。その直接の原因が中性子の被曝でした。中性子は使い方を誤ると、悲惨な事故につながることを痛感しました。 ☆ 核融合発電 では、核融合炉の中以外で中性子を発生することはありません。また運転中は建物への入室が禁止されます。 暴走することは原理的になく 、瞬時に中性子発生を止めることができます。だからJCOのような「臨界事故」は起こりません。(当然チェルノブイリのような事故も起こりません) ☆ 中性子はエネルギーを取り出す ために、炉内の金属壁で止める必要があります。ですから、ほとんどが炉内の金属壁で止まってしまい、炉の外には飛び出してこないわけです。ただし、100%が炉の壁で止まるわけではありません。 ☆炉が入る建物は、中性子が外に飛び出ないように分厚いコンクリートの壁でできています。それでも少しだけ通り抜けるものがあります。その量(他の放射線も含めて)は原子力発電所では敷地の境界で年間50マイクロシーベルトという目標値が設定されています。(マイクロシーベルトは放射線防護の目的で使われる放射線の量の単位)核融合発電所でも完成すれば、この基準を使うでしょう。さて50マイクロシーベルトが大きいのか小さいのかが気になってきます。中性子は宇宙から常に降っています。高度が高いほど中性子が多く、アメリカやヨーロッパまでのフライト片道で50マイクロシーベルトの中性子を受けます。( 外部リンク:放射線医学総合研究所のホームページ )定期検診で受けている胸のレントゲン写真はX線という別の放射線ですが、だいたい100マイクロシーベルトです。敷地境界に年中ずっといて、50マイクロシーベルトという基準は、過度に怖がる量ではないと思います。

核融合発電は爆発しません

★今日は広島に原子爆弾(原爆)が投下された日。原子爆弾はウランやプルトニウムの核分裂反応を利用した非人道的な兵器です。世界は協力して核廃絶を実現しなければなりません。 ★核融合エネルギーにも「核」という文字がつきます。残念なことですが核融合エネルギーも非人道的兵器に利用されたことがあります。水素爆弾(水爆)と呼ばれるものです。1950年代に米国によって実験が行われました。第5福竜丸が被曝したのも水素爆弾の実験(1954年)です。 ★水素爆弾は原子爆弾(ウランかプルトニウム)の中心に重水素化合物(おそらく固体)を入れて、核融合反応を起こして爆発力を強めたものです。つまり核融合反応を起こすための起爆剤に原子爆弾を使ったもので、原子爆弾を使わなければ水素爆弾はできません。また水素爆弾の放射性降下物のほとんどがウランやプルトニウムからできたものです。 ☆「制御された」核融合エネルギー( 核融合発電所 )は、純粋な 重水素 と 三重水素 (どちらも水素の同位体)の気体を混ぜて、 真空に近い状態 でゆっくりと反応させます。ウランやプルトニウムは使いません。核融合発電所の発電量は火力発電とほぼ同じ100万キロワット程度です。これに対して水素爆弾は、核融合発電で生じる「3年分の総エネルギー」を、10万分の1秒という一瞬に放出します。核融合発電と水素爆弾は反応の速さが桁違いに違う、全く別のものなのです。 ☆爆発とは、高圧力に圧縮された物質が短時間に外に飛び散ることです。核融合発電の燃料は温度が高くなっても 数気圧にしかなりません 。これでは爆発しません。 ☆ 核融合発電 は爆発の心配のない発電システムなのです。

核融合発電は暴走しません

☆ 核融合発電 の 原料は海水 。これが良いことの1番目だとすると、2番目の良い点は左の写真のコンロと関係しています。コンロに天ぷら油を入れた鍋をかけて暖めます。コック(ツマミ)を調節して油の温度を適当なところに調節して、そして天ぷらを揚げます。ここで、間違ってコックを目一杯開いて、放置したらどうなるか想像してください。油の温度はどんどん上がり、炎が上がります。こうなるともうなかなか消えません。核融合発電ではこのような『暴走』という現象が起きません。 ☆ 核融合発電 では、コンロと同じようにツマミを開いて燃料(熱)を供給し、温度を高めて行きます。ちょうど良いところで、つまみを調節して燃え続けるようにします。ところが、それ以上にツマミを開くと、温度が下がって、逆に燃焼が止まってしまいます。天ぷら油の場合と違いますね。だから暴走しようがありません。いつもツマミを調整し続けないと燃えません。どのようにツマミを調整するかが難しいのですが、現在は実験装置やスーパーコンピュータを使った研究が進んで、ツマミの調節方法も予測できるようになってきました。 ☆ 核融合発電 は暴走事故の起こらない発電システムとなります。 (2014.1.10追記)原子力発電との比較でいうと、連鎖反応ではないということが重要です。ウランを使う核分裂反応は、一つの反応が次の反応の引き金になります。次々に反応が続くので連鎖反応と言います。連鎖反応が続く状態を「臨界」とも言います。しかし、核融合発電での水素の核融合反応は、個々の反応が連鎖していなくて独立したものです。だから、原理的に暴走が起きないのです。