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超伝導磁石が爆発するわけがない

★日本で出版されたいくつかの書物に、「核融合発電のための超伝導磁石はTNT火薬○○トンのエネルギーを蓄積しているので『爆発』するかもしれない」と書かれています。中には、「日本物理学会編」というものもあります。私は長い間、超伝導磁石の研究をしていますが、超伝導磁石自身が爆発したというはなしを聞いたことがありません。(当然、永久磁石でも)

☆そもそも爆発といのは、物体(ガスなど)が一瞬で膨張して、周りに爆風などをもたらすことです。さて、超伝導磁石は電磁石です。導線を巻いて電流を流すコイルです。(磁気エネルギーを持っているので、外側に膨張しようとする電磁力が働いているのは事実です)そこで、少し膨張させてみましょう。導線は切れて、電流は流れなくなります。それ以上電磁力は働かず、膨張はしません。(もし、導線がゴムのように伸びるのであれば、一瞬で膨張させることもできるかもしれませんが)回りくどい言い方かもしれませんが、超伝導磁石を爆発させることは不可能です。

★色々な本が書店に並んでいますが、(当然ですが)全て真実が書かれているわけではありません。あまりにも極端な(人を脅かすような)比喩表現には注意が必要だと思います。そんな本が売れたりするのでしょうが・・

コメント

匿名 さんのコメント…
まだまだ、知名度が低く誤解や偏見の多い核融合技術に多くの人の理解が得られるよう願って止みません。

核分裂炉に逆境吹き荒れる現在は、今後の日本のエネルギー問題の明暗を分ける正念場だと思いますので、核融合研究者の方々、頑張ってください。よろしくお願い致します。
☆のかけら さんの投稿…
そう言っていただけると本当に嬉しいです。少しでも多くの方の理解が得られるよう、また一刻も早く核融合発電が実現するよう精進していきたいと思います。
カレーは水だ さんのコメント…
偶然このブログを拝見しました。
そして偶然隣の町に住んでます(笑)
近くにこんな世界的な研究施設があるのに何も知りませんでした。

とても勉強になりました。

しかし「核」という言葉にまだまだ拒否反応を示す人が多いのも事実だと思います。

私は人類を救うすばらしい研究だと思いました。

もっと理解されるよう広報も頑張って下さい。
☆のかけら さんの投稿…
コメントありがとうございます。がんばって広報活動します!
匿名 さんのコメント…
http://ir.library.osaka-u.ac.jp/metadb/up/LIBLTCK01/ltc146_10.pdf
こういうところから爆発の話が出ているのでしょうかね?
超伝導磁石自身というより冷媒が爆発的に噴出している気がしますが。
☆のかけら さんの投稿…
コメントありがとうございます。
これは超伝導磁石の爆発でなくて、低温冷媒の容器を密閉してしまったことによる容器の破裂ですね。(超伝導磁石がなくても起こりえます)
液体ヘリウムが蒸発したとき、その体積は700倍にもなります。ということは容器を密閉してしまって体積が変わらないと、圧力が700気圧になって、たいていの容器は破裂してしまいます。
そのため、液体ヘリウムを製造する施設は「高圧ガス保安法」という法律で厳しく規制(昔は取り締まりと言っていました)を受けています。(私も法律で決められた保安係員という役職ですが、本当に厳しい規制です)法律で規制された施設では、運転中無人になることはなく、絶対に密閉状態にならないように安全弁、破裂板(一定の圧力で自動的に壊れる蓋)を取り付けるように決められています。従って法律の厳しい規制を受けている施設(私のところでもそうですが)では、液体ヘリウムの蒸発によって容器が破裂することはまず考えられません。

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私たちは核融合反応によってできた「星のかけら」でできています

☆宇宙ができたとき、この世に存在する元素は水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウムといった軽い元素だけでした。それらが集まって星になり、核融合反応を起こし、より重い元素に変わっていきます。水素はヘリウムに、ヘリウムは炭素や酸素に、最終的には鉄まで重くなっていきます。(鉄より重い元素はまた別の反応でできます)星は最後には超新星爆発によって宇宙に飛び散っていきます。その星屑が集まってできたのが、地球であり、人間なのです。つまり、人間は、核融合反応によってできた「星のかけら」なのです。 ☆天文学者のカール・セーガン著「人はなぜエセ科学に騙されるのか(上)」に次のような一節があります。「水素を別にすれば、人体を作っているすべての原子は、血の中の鉄にしろ、骨をつくるカルシウムにしろ、脳の中の炭素にしろ、何千光年もかなたの赤色巨星のなかで、何億年も昔に作られたものなのだ。『われわれは星屑でできている』というのは、私のお気に入りのセリフである。」

核融合と核分裂の違い

★原子力発電所の事故以来、『核分裂』と言うべきところを『核融合』と言い間違えている発言をよく耳にするので、ここはしっかりと訂正しておきたいと思います。(こんな時期なので黙っておこうと思ったのですが、わたしにも少しは主張する権利があると思い・・) ★原子力発電所で起こる反応は『核分裂(カクブンレツ)』です。ウランのような重たい原子核が分裂して2つに割れることを『核分裂』といいます。(上側の絵)原子力発電所で『核融合』が起こることはありえません。(原子力発電所で起きた水素爆発は、水素と酸素の化学反応で、核融合ではありません)ついでに高速増殖炉(もんじゅ)も『核分裂』です。 ☆『核融合(カクユウゴウ)』は、水素のような軽い原子核が二つくっついて、一つになることです。(下側の絵)今、 世界中で研究 が行なわれている 『核融合』発電 は、水素をくっつけて(融合して)、ヘリウムにする 制御された 核融合反応 を使います。その時、『核分裂』を使うことはありません。 ☆だから、次のことは自明です。 『核融合』発電ではウランを使いません 。だから、 爆発もしない し、 暴走もしない し、連鎖反応もしないし、再臨界もしないし、メルトダウンもしないし、核燃料もないし、核物質もないし、核不拡散問題もないし、高レベル放射性廃棄物もありません。 【水素爆弾との違いは 私の別の記事 を参照ください】 ☆初期(まだ実現まで25~30年くらいかかるけど)の『核融合』発電も、 トリチウム(三重水素) という放射性物質(半減期が12年)を扱うため、100%クリーンとはいえません。しかし、放射能漏れによる潜在的リスク(発電所が保有する放射性物質の強さの合計)は原子力発電の1000分の1以下です。だから 最悪の事故 を考えても、周辺住民が避難するような事態にはなりません。

重水素燃料を海水から取り出すためのエネルギー

☆ 核融合発電 の 燃料 は 重水素(水素の同位体) ガスです。海水中に無尽蔵に存在するため、枯渇する心配がありません。ところが、水素の中の重水素の存在比率は0.015%しかありません。「重水素を抽出するために、莫大なエネルギーを使わないのですか?」と質問をされることがあります。その質問にお答えしたいと思います。 ☆上の絵は、水の中の分子の様子を表したものです。ほとんどの水分子では、水素(青い玉)2個と酸素(黄色い玉)1個がくっついている状態が、ほんの一部だけは重水素(赤い玉)と酸素がくっついています。この重水素と酸素が結合した水のことを「重水」と呼びます。また普通の水素でできた水を「軽水」と呼びます。(「重水」と「重水素」は違うものですのでご注意ください。また実際には水素1個と重水素1個と酸素1個が結合した水分子があるのですが、話しを簡単にするためにここでは省略します。) ☆「軽水」と「重水」を分離する技術は、すでに工業化されています。新しい方法としては、電気分解を使う方法があります。電気分解(電気で水素と酸素に分解すること)すると、「重水」より「軽水」の方が早く分解します。だから部分的な電気分解を繰り返すと「重水」だけが濃縮されて残っていくというしくみです。 ☆「重水」ができれば、後はこれを、完全に電気分解すれば「重水素」ガスと酸素ガスに分解できます。重水素はこうのようにして生産されます。 ☆さて問題は、重水素の生産に必要なエネルギーです。生産過程では「重水」生産がほとんどのエネルギーを使います。論文で調べると、1kgの重水を生産するのに必要なエネルギーは57MWh(メガワット時)ということでした。一方、1kgの重水には200gの重水素が含まれてます。この重水素を使って核融合反応を起こすと38,000MWhのエネルギーが発生します。これは重水生産に必要なエネルギー(57MWh)の約700倍になります。つまり、燃料生産に必要なエネルギーは、発電されるエネルギーに対して十分に小さいという結果になります。 (参考:R. Dutton他、Nuclear Engineering and Design 144 (1993) 269)

核融合発電のしくみ

☆下の絵は、核融合発電の仕組みを簡単に書いたものです。核融合発電の中心は「核融合炉」です。(火力発電では「ボイラー」、原子力発電では「原子炉」と呼びます)炉の中で 燃焼 しているのは、水素の仲間( 重水素 と 三重水素 )を 真空状態に近い希薄なガス にし、 1億度 まで加熱したものです。これを 『プラズマ』 と呼びます。中では 核融合反応 が起きていて、反応で発生したエネルギーを熱として取り出して水を沸騰させます。そして蒸気でタービンを回し発電します。蒸気はもう一度海水で冷やして水に戻します。ここまでの話では、燃えているものが違うだけで、火力発電、原子力発電とおおまかな仕組みは同じです。(次世代の核融合発電では効率の高い 直接発電 も考えられています) ☆火力発電や原子力発電では燃焼している燃料から直接熱が発生し、熱を取り出すことができます。ところが核融合炉ではまず、 核融合反応でできた高速で飛び出してくる素粒子、つまり中性子 を周りを覆った厚さ1mの ブランケット と呼ばれる部分で受け止めます。ブランケットで受け止められた中性子は速度を落とし、その落ちた速度に相当するエネルギーが熱に変わります。(この時のプランケットの温度は500度ぐらい)この中性子の運動エネルギーが熱エネルギーに変わるところが従来の発電と異なる点です。 ☆材料(主に金属)に中性子が当たると、機能が劣化したり、 放射化(普通の材料が放射能を持つように変化) したりします。中性子が当たっても丈夫な材料、さらに放射化しにくい材料の研究が現在精力的に行われています。そして最初の核融合炉に使うことができる材料の候補もすでに見つかっています。当然のことですが、 生体遮蔽(作業者や周辺の住民に中性子を含む放射線が当たらないようにすること) が絶対に必要ですが、その技術はすでに開発されています。 ☆プラズマが周囲の壁に触れてしまうと、プラズマの温度が下がって、核融合反応が止まってしまいます。そのために 『磁場のかご』 を使ってプラズマを空中に浮遊させます。(このとき壁とプラズマは離れていて、その間は真空になっています)この『磁場のかご』を作り出すのが、ブランケットの外側にある 超伝導 マグネットです。超伝導マグネットはマイナス269度という極低温に冷やされます。 1億度という超高温 と...

夢の核融合反応

☆核融合反応は、軽い原子核同士を高速で(超高温状態で)衝突させて、少し重たい原子核に変換する反応です。原子核が融合するときに大きなエネルギーが発生します。 ☆温度が高くなるほど核融合反応は起こりやすくなりますが、最も起こりやすい 重水素 (記号D)と 三重水素 (記号T)の反応(D-T反応)でも温度を 1億度 にしなければなりません。最初の核融合発電で使われる反応は当然このD-T反応になります。この反応の短所は、反応によって中性子が発生し、中性子のエネルギーを熱に変換して発電しなければならないことです。 ☆さて、夢の核融合反応と言われているのは、 重水素 とヘリウム3の反応(D-3He反応)です。この反応では上記のD-T反応に比べて、中性子の発生量を数10分の1に減らすことができ、発生する水素の原子核(陽子)から直接電気をとり出すことができます。燃料のヘリウム3は、月、木星、土星にたくさんあることが知られていて、将来の宇宙時代のエネルギー源と考えられています。ところが温度は10億度(D-T反応の10倍)近くにしなければならず、プラズマの閉じ込めがかなり難しくなります。(初期のガンダムにこの反応が使われているという話を聞いたことがあります) ☆さらに究極的な夢の核融合反応が、通常の水素とホウ素の反応(p-11B反応)です。発生するのは、安定なヘリウムだけで、中性子が発生しません。ヘリウムの原子核は電気を帯びているので、これから直接電気が取り出せます。しかし、さらに超高温が必要で、磁場で閉じ込める方式では現在の技術の限界を超えています。 ☆しかし夢はいつか夢でなくなる時が来ます。それまで人類が存続できればですが。