スキップしてメイン コンテンツに移動

核融合発電の起動に核分裂炉は必要ありません

私はWikipedia日本語版を見ないことにしています。英語版と全く内容の質が違うからです。でも稀に気になって核融合についての記述を確認してしまいます。(ググるとWikipediaはいつも上位にいますから)そしていつも意図の分からない記述を見つけてしまいます。

例えば、【核融合炉】についてのこんな記述。これは、この部分は最近追記されたものです。
『しかし、核融合反応を起こすための起電力を得るために、核分裂炉が必要である。ただし、臨界プラズマ条件を満たして核融合反応が進行すれば、自己点火条件に移行させて、その時点で核分裂炉は不要となる。』(http://ja.wikipedia.org/wiki/核融合炉より引用)

これは間違いです。もちろん2ヶ所の「核分裂炉」を「電気」か「電力」に替えれば、ほぼ問題ない文章になります。電気(電力)が得られればどんな発電方法(火力発電でも、自然エネルギーでも、将来なら核融合発電でも)でもよいのですが、ここで敢えて「核分裂炉」と限定した意図が分からないのです。核兵器(水爆)を連想させようとした悪意はないと信じていますが・・。

ここで、ちゃんと訂正しておきます。(Wikipediaの訂正の仕方は分からないから)
核融合反応を起こすための起電力を得るために、核分裂炉(今の原子力発電)は必要ありません。

とはいっても、核融合発電の起動電力は、数10万キロワットと考えられています。発電所1基分とはいかないまでも、かなり大きな電力が短時間(プラズマが点火するまで)に必要となります。一般の電力系統から受電すると、電力需要に大きな変動を与えることになります。ここはまだ検討の余地がありそうです。

(8/24追記)Wikipediaから上記の記述が削除されていました。この記事も必要ないことになりますが、まだ誤解もあるかと思うので、残しておきます。

コメント

ひな さんのコメント…
え!?

wikipedia見ないんですか?

私はいつも見てしまいます・・・

英語版と質が違うんですね・・・

見ないで、こんなにすごいブログが書けるなんて、尊敬します☆

すごいです!
☆のかけら さんの投稿…
ちょっと言い過ぎたかな。私も文学とか音楽とか歴史のこととかではWikipediaにお世話になっています。でも科学に関しては、(日本語版は)間違いが多いので、参考にしないようにしています。
例えば、「酸素」をWikipediaで見てください。右の表に「その他:磁性」という欄があり、「反磁性」と書いてあります。同じ表は英語版にもあります。そこには「paramagnetic」(常磁性)と書かれています。常磁性と反磁性は、磁石にくっつくか、離れるかという全く逆の性質です。で、正しいのは英語版の常磁性です。(誰かが訳し間違えたのでしょうかね)
ですから、科学について、本当に間違いのないことをWikipediaで調べるのであれば、英語版を自分で訳すしかないですね。

最近1ヶ月でよく読まれている投稿

核融合と核分裂の違い

★原子力発電所の事故以来、『核分裂』と言うべきところを『核融合』と言い間違えている発言をよく耳にするので、ここはしっかりと訂正しておきたいと思います。(こんな時期なので黙っておこうと思ったのですが、わたしにも少しは主張する権利があると思い・・) ★原子力発電所で起こる反応は『核分裂(カクブンレツ)』です。ウランのような重たい原子核が分裂して2つに割れることを『核分裂』といいます。(上側の絵)原子力発電所で『核融合』が起こることはありえません。(原子力発電所で起きた水素爆発は、水素と酸素の化学反応で、核融合ではありません)ついでに高速増殖炉(もんじゅ)も『核分裂』です。 ☆『核融合(カクユウゴウ)』は、水素のような軽い原子核が二つくっついて、一つになることです。(下側の絵)今、 世界中で研究 が行なわれている 『核融合』発電 は、水素をくっつけて(融合して)、ヘリウムにする 制御された 核融合反応 を使います。その時、『核分裂』を使うことはありません。 ☆だから、次のことは自明です。 『核融合』発電ではウランを使いません 。だから、 爆発もしない し、 暴走もしない し、連鎖反応もしないし、再臨界もしないし、メルトダウンもしないし、核燃料もないし、核物質もないし、核不拡散問題もないし、高レベル放射性廃棄物もありません。 【水素爆弾との違いは 私の別の記事 を参照ください】 ☆初期(まだ実現まで25~30年くらいかかるけど)の『核融合』発電も、 トリチウム(三重水素) という放射性物質(半減期が12年)を扱うため、100%クリーンとはいえません。しかし、放射能漏れによる潜在的リスク(発電所が保有する放射性物質の強さの合計)は原子力発電の1000分の1以下です。だから 最悪の事故 を考えても、周辺住民が避難するような事態にはなりません。

核融合と核分裂のエネルギー比較

核融合も 核分裂 も 原子核の質量欠損 を使ったエネルギーなので、少量の燃料で大きなエネルギーを得ることができます。工学的に大きな意味はないのですが、核融合と核分裂のエネルギーを比較してみましょう。 1個のウラン(U)原子核が核分裂したときに発生するエネルギーは、約200MeV(メガ電子ボルト)です。(MeVは物理で使うエネルギーの単位です。大きさを比較するだけなので、ここでは詳しい説明は省略します)一方、1個の 重水素 (2H)原子核と1個の 三重水素 (3H)原子核が核融合したときに発生するエネルギーは、約17MeVです。そうです、1回の反応で発生するエネルギーは、核分裂の方が核融合より約10倍大きいことが分かります。 ところが、こんな比較もできるのです。同じ燃料の重さから発生するエネルギーの比較です。ウランは水素よりかなり重たいので、燃料の単位重さ当たりで発生するエネルギーは、逆に核融合の方が核分裂より4倍大きくなります。 もっと分かりやすく表現すると、核分裂の燃料ウラン1グラムは「石炭3トン分」のエネルギーに相当します。一方、核融合の燃料(水素)1グラムは「石炭13トン分」に相当します。さらに、これは「石油約8トン分」です。いずれにしても、少ない燃料で大きなエネルギーが得られることにかわりありません。 ※ここでは反応で生まれるエネルギーを計算しました。発電所で電気エネルギーに変換すると、発電効率がかけ算されるので、少し数字が変わります。

新しいブログサイトへ引っ越しします|「ゆるりと学ぶフュージョン」始めます

 この「星のかけら 核融合」というブログサイトでは、 これまで 核融合にまつわる情報を、できるだけ分かりやすく 発信してきました。 とくに、私の職場にある超高温プラズマをつくる実験装置 大型ヘリカル装置(LHD) による重水素実験について、 地元の方々の不安や誤解を、少しでも和らげたい── そんな思いで書き続けてきたブログです。 その重水素実験もすでに終了し、 このブログも当初の役目をひと区切り終えたと感じたことから、 ここ2年ほど更新を止めていました。 今回あらためて、 「ゆるりと学ぶフュージョン」 という新しいブログサイトを立ち上げることにしました。 これから社会全体として、 いよいよ 「核融合発電所を実際につくっていこう」 という段階に入りつつあります。 その過程で、もし再び不安や誤解が広がってしまうと、 せっかくの計画が進まなくなるおそれもあります。 だからこそ、 今あらためて やさしく、落ち着いて学べる場 が必要だと感じました。 また、国の方針などもあり、 最近では「核融合発電」という言い方に加えて、 「フュージョンエネルギー」 という言葉も使われるようになってきました。 「フュージョンって何?」 「核融合とどう違うの?」 そう感じる方も多いと思います。 そこで、これまでこのブログでお伝えしてきた内容も大切に引き継ぎながら、 用語は「フュージョン」に切り替え、 より入門的で、ゆるやかに学べる形 で再出発してみようと思いました。 ぜひ、新しいブログサイト 「ゆるりと学ぶフュージョン」 にもお立ち寄りください。 ▶ 入口はこちらです https://yurufusion.hatenablog.jp/

核融合発電は爆発しません

★今日は広島に原子爆弾(原爆)が投下された日。原子爆弾はウランやプルトニウムの核分裂反応を利用した非人道的な兵器です。世界は協力して核廃絶を実現しなければなりません。 ★核融合エネルギーにも「核」という文字がつきます。残念なことですが核融合エネルギーも非人道的兵器に利用されたことがあります。水素爆弾(水爆)と呼ばれるものです。1950年代に米国によって実験が行われました。第5福竜丸が被曝したのも水素爆弾の実験(1954年)です。 ★水素爆弾は原子爆弾(ウランかプルトニウム)の中心に重水素化合物(おそらく固体)を入れて、核融合反応を起こして爆発力を強めたものです。つまり核融合反応を起こすための起爆剤に原子爆弾を使ったもので、原子爆弾を使わなければ水素爆弾はできません。また水素爆弾の放射性降下物のほとんどがウランやプルトニウムからできたものです。 ☆「制御された」核融合エネルギー( 核融合発電所 )は、純粋な 重水素 と 三重水素 (どちらも水素の同位体)の気体を混ぜて、 真空に近い状態 でゆっくりと反応させます。ウランやプルトニウムは使いません。核融合発電所の発電量は火力発電とほぼ同じ100万キロワット程度です。これに対して水素爆弾は、核融合発電で生じる「3年分の総エネルギー」を、10万分の1秒という一瞬に放出します。核融合発電と水素爆弾は反応の速さが桁違いに違う、全く別のものなのです。 ☆爆発とは、高圧力に圧縮された物質が短時間に外に飛び散ることです。核融合発電の燃料は温度が高くなっても 数気圧にしかなりません 。これでは爆発しません。 ☆ 核融合発電 は爆発の心配のない発電システムなのです。

核融合実験装置からのエネルギー発生〜2022年のニュースから

 つい最近、レーザー核融合実験装置が、投入した以上のエネルギーを発生したとのニュースが流れ、国内のテレビニュースでも報道されました。ここでは、今年の2月に発表された磁場核融合実験装置のエネルギー発生ニュースと合わせて紹介したいと思います。 まず、基本的なところから説明します。核融合発電開発を目標にした実験装置でエネルギーを発生するためには、 実燃料である重水素と三重水素 (どちらも水素の同位体)を混合して、高温プラズマにする必要があります。その温度は 1億度 です。その方法に二通りあって、このブログサイトで主に紹介している「 磁場(閉じ込め)核融合 」と「慣性(閉じ込め)核融合」の2つです。「磁場核融合」では、 超伝導磁石で作られた強い磁場の容器 (直径は10メートル級)の中に、真空状態に近い燃料ガスを入れ、外部から定常的に加熱することでゆっくりと超高温にします。一方、「慣性核融合」では、直径数ミリの球状の容器に燃料ガスを封じ込め、周囲からレーザー光線を当てて、瞬間的に(1ナノ秒=10億分の1秒程度の時間)、超高温にします。同じ温度にするにしてもプラズマの粒子密度と閉じ込め時間が全く違います。 さて、先日(2022年12月)のレーザーを用いた慣性核融合のニュースから紹介します。成果を発表した装置は、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)にある国立点火施設(NIF)です。315万ジュール(3.15MJ)の核融合エネルギーが発生しました。この時、サッカースタジアム規模のレーザー発生装置から小さな燃料ペレットに与えられたエネルギーは205万ジュール(2.05MJ)でした。つまり、出力と入力が釣り合うブレークイーブンを越えたことになります(慣性核融合ではこれを「点火」と呼んでいます)。出力/入力を計算したものをQ値と呼ぶので、Q>1を達成したことになります。 NIFの内部写真( 米国NNSAのfrickr (外部リンク)より) 次は2022月2月に発表された英国の欧州トーラス共同研究施設(JET)という装置のエネルギー発生のニュースを紹介します。JETは磁場核融合の実験装置で、特に トカマク方式 と呼ばれるものです。2021年12月21日の実験で、JETは5秒間に5,900万ジュール(59MJ)のエネルギーを発生しました。この時のQ値は0.33でした。ブレ...