スキップしてメイン コンテンツに移動

太陽と「地上の太陽」の違い【3】

☆以前、太陽中心で起こっている核融合と「地上の太陽」と呼ばれている核融合発電の違い(【1】【2】)を紹介しました。それは次の二つの大きな違いです。
水素ガス(プラズマ)の圧力:
  太陽 2500億気圧
  発電 数気圧
水素ガス(プラズマ)閉じ込めの原理:
  太陽 重力(地球の30万倍の重さ)
  発電 超伝導磁石を使った強い磁場

☆すでに紹介したことがあるのですが、最後に三つ目の違いを紹介します。それは、融合(フュージョン)反応を起こしている水素の種類の違いです。
☆太陽では、水素の原子核が2個(つまり陽子が2個)融合して重水素(陽子1個と中性子1個の原子核)になる反応が最初に起こります。引き続いて重水素が別の融合反応を起こして、ヘリウムに変わっていきます。最初の水素同士の融合反応はとても起こりにくい反応なので、太陽と同じことを地上で実現し、エネルギー源とすることはまず不可能です。
太陽の融合反応

☆一方、地上の核融合発電では、燃料に水素ではなく、重水素三重水素(陽子1個と中性子2個の原子核)を使います。これは融合反応を一番起こしやすい水素の仲間(同位体)です。幸いにも地球上には初期の宇宙で作られた重水素が残っていました。海には50兆トンもの重水素があります。(水の形で)三重水素は、自然界にほとんど存在しませんが、同じく海水に含まれる2000億トンのリチウムから生産することができます。偶然というか、奇跡というか、自然界にはエネルギー源となりうる融合反応の燃料が存在していたのです。もしこれらの燃料が地球上になければ、核融合発電の実現可能性はゼロだったでしょう。
核融合発電の融合反応

コメント

最近1ヶ月でよく読まれている投稿

核融合と核分裂の違い

★原子力発電所の事故以来、『核分裂』と言うべきところを『核融合』と言い間違えている発言をよく耳にするので、ここはしっかりと訂正しておきたいと思います。(こんな時期なので黙っておこうと思ったのですが、わたしにも少しは主張する権利があると思い・・) ★原子力発電所で起こる反応は『核分裂(カクブンレツ)』です。ウランのような重たい原子核が分裂して2つに割れることを『核分裂』といいます。(上側の絵)原子力発電所で『核融合』が起こることはありえません。(原子力発電所で起きた水素爆発は、水素と酸素の化学反応で、核融合ではありません)ついでに高速増殖炉(もんじゅ)も『核分裂』です。 ☆『核融合(カクユウゴウ)』は、水素のような軽い原子核が二つくっついて、一つになることです。(下側の絵)今、 世界中で研究 が行なわれている 『核融合』発電 は、水素をくっつけて(融合して)、ヘリウムにする 制御された 核融合反応 を使います。その時、『核分裂』を使うことはありません。 ☆だから、次のことは自明です。 『核融合』発電ではウランを使いません 。だから、 爆発もしない し、 暴走もしない し、連鎖反応もしないし、再臨界もしないし、メルトダウンもしないし、核燃料もないし、核物質もないし、核不拡散問題もないし、高レベル放射性廃棄物もありません。 【水素爆弾との違いは 私の別の記事 を参照ください】 ☆初期(まだ実現まで25~30年くらいかかるけど)の『核融合』発電も、 トリチウム(三重水素) という放射性物質(半減期が12年)を扱うため、100%クリーンとはいえません。しかし、放射能漏れによる潜在的リスク(発電所が保有する放射性物質の強さの合計)は原子力発電の1000分の1以下です。だから 最悪の事故 を考えても、周辺住民が避難するような事態にはなりません。

核融合と核分裂のエネルギー比較

核融合も 核分裂 も 原子核の質量欠損 を使ったエネルギーなので、少量の燃料で大きなエネルギーを得ることができます。工学的に大きな意味はないのですが、核融合と核分裂のエネルギーを比較してみましょう。 1個のウラン(U)原子核が核分裂したときに発生するエネルギーは、約200MeV(メガ電子ボルト)です。(MeVは物理で使うエネルギーの単位です。大きさを比較するだけなので、ここでは詳しい説明は省略します)一方、1個の 重水素 (2H)原子核と1個の 三重水素 (3H)原子核が核融合したときに発生するエネルギーは、約17MeVです。そうです、1回の反応で発生するエネルギーは、核分裂の方が核融合より約10倍大きいことが分かります。 ところが、こんな比較もできるのです。同じ燃料の重さから発生するエネルギーの比較です。ウランは水素よりかなり重たいので、燃料の単位重さ当たりで発生するエネルギーは、逆に核融合の方が核分裂より4倍大きくなります。 もっと分かりやすく表現すると、核分裂の燃料ウラン1グラムは「石炭3トン分」のエネルギーに相当します。一方、核融合の燃料(水素)1グラムは「石炭13トン分」に相当します。さらに、これは「石油約8トン分」です。いずれにしても、少ない燃料で大きなエネルギーが得られることにかわりありません。 ※ここでは反応で生まれるエネルギーを計算しました。発電所で電気エネルギーに変換すると、発電効率がかけ算されるので、少し数字が変わります。

プラズマを磁場で閉じ込める原理

☆ 核融合発電 では, 超伝導磁石 で作った強力な磁場で 1億度 の水素ガスを閉じ込めます。閉じ込めるというのは,真空の容器の中で壁にぶつからないように空中に浮遊させることです。では,どうして磁石で水素ガスを閉じ込めることができるのでしょうか? ☆「鉄」が磁石にくっつくというのは誰もが知っていることです。もう一つ磁石によって力が働き,動かせるものがあります。「電気の流れ」つまり「電流」です。ちょっと難しそうな話ですが,磁石によって電流に働く力を使ったものは身の回りにたくさんあります。洗濯機,冷蔵庫,パソコンのファンに使われているモーター,テレビのブラウン管,スピーカーなどすぐ身近にあります。(分解すると磁石が入っています。) ☆ 1億度の水素ガスはプラズマ状態 と呼ばれ,電子をはぎ取られた原子核が高速で飛び回っています。原子核はプラスの電気を帯びていて,これが走ると電流となり,磁場の中で力を受けます。そして図のように磁場のなかでクルクル回り出します。そして原子核は磁場にまとわりつき,逃げていかないというわけです。はぎ取られた電子も同じように電気を帯びているので、磁場にまとわりつきます。 ☆核融合の研究では,どのような形の磁場(磁石)を作れば,上手くプラズマを磁場の中に閉じ込めておけるかが重要なテーマとなっています。そこで 大型ヘリカル装置ではねじれた形の磁石 を使って,プラズマを閉じ込める研究をしています。

重水素燃料を海水から取り出すためのエネルギー

☆ 核融合発電 の 燃料 は 重水素(水素の同位体) ガスです。海水中に無尽蔵に存在するため、枯渇する心配がありません。ところが、水素の中の重水素の存在比率は0.015%しかありません。「重水素を抽出するために、莫大なエネルギーを使わないのですか?」と質問をされることがあります。その質問にお答えしたいと思います。 ☆上の絵は、水の中の分子の様子を表したものです。ほとんどの水分子では、水素(青い玉)2個と酸素(黄色い玉)1個がくっついている状態が、ほんの一部だけは重水素(赤い玉)と酸素がくっついています。この重水素と酸素が結合した水のことを「重水」と呼びます。また普通の水素でできた水を「軽水」と呼びます。(「重水」と「重水素」は違うものですのでご注意ください。また実際には水素1個と重水素1個と酸素1個が結合した水分子があるのですが、話しを簡単にするためにここでは省略します。) ☆「軽水」と「重水」を分離する技術は、すでに工業化されています。新しい方法としては、電気分解を使う方法があります。電気分解(電気で水素と酸素に分解すること)すると、「重水」より「軽水」の方が早く分解します。だから部分的な電気分解を繰り返すと「重水」だけが濃縮されて残っていくというしくみです。 ☆「重水」ができれば、後はこれを、完全に電気分解すれば「重水素」ガスと酸素ガスに分解できます。重水素はこうのようにして生産されます。 ☆さて問題は、重水素の生産に必要なエネルギーです。生産過程では「重水」生産がほとんどのエネルギーを使います。論文で調べると、1kgの重水を生産するのに必要なエネルギーは57MWh(メガワット時)ということでした。一方、1kgの重水には200gの重水素が含まれてます。この重水素を使って核融合反応を起こすと38,000MWhのエネルギーが発生します。これは重水生産に必要なエネルギー(57MWh)の約700倍になります。つまり、燃料生産に必要なエネルギーは、発電されるエネルギーに対して十分に小さいという結果になります。 (参考:R. Dutton他、Nuclear Engineering and Design 144 (1993) 269)

ステラレータ(星の発生装置)

☆私の研究所にある「大型ヘリカル装置」は、ステラレータ(Stellarator)という名前の装置の仲間です。ステラレータは、天文学者でもある米国プリンストン大学のスピッツァー教授が1950年頃に考案しました。この名前も彼がつけたもので、Stellar-「星の」という形容詞がついた天文学者らしい命名です。なんと最初のステラレータ装置は「8の字」の形をしていたそうです。ステラレータはその後、色々な改良が加えられ、京都大学でヘリオトロン(Heliotron、helioは太陽の意)という装置が考案されました。「大型ヘリカル装置」は日本で進化を遂げた世界最大のヘリオトロン装置です。 ☆ステラレータやヘリオトロンと同じドーナツ状のプラズマを作る装置にトカマク(TOKAMAK)があります。こちらは旧ソビエトで考案され、名前もロシア語でTOK(電流)、KAMEPA(容器)、MAGNITNUE(磁気)、KATUSHKI(コイル)の頭文字からきています。これまでトカマクのほうが大きな装置が作られ、プラズマ最高温度の記録も持っています。国際協力で建設が始まろうとしているイーター(ITER)もトカマクです。トカマクで核融合反応の実証が行われ、次に作られる 核融合発電所 については、いろいろな装置の競争になるだろうと考えています。