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3月, 2017の投稿を表示しています

放射線についてのわかりやすい参考書

【菊池誠(物理学者)✕小峰公子(ミュージシャン)おかざき真里(絵とマンガ)「いちから聞きたい放射線のほんとう いま知っておきたい22の話」筑摩書房】  最近、放射線について話すことが増え、分かりやすい説明をしたいと思い、名古屋の丸善に参考書を見に行きました。もちろん、原発事故以降の関心の高まりで数多くの関連書籍が出版されていました。少し立ち読みしたら、不安を煽るものから、安心を強調したものまで、極端に意見が別れていました。それくらい極端な意見の方が売れるんだろうなと勘ぐってしまいます。  そんな中で、平積みになっていた少しゆるい感じの本が目に止まりました。帯に「放射線のしくみから、からだに与える影響まで、いまこそ知っておきたい大事なことを、数式を使わずにていねいに解説。放射線が気になる人のための、もっともベーシックでわかりやすい本」と書いてありました。実際、対談形式になっていて、確かに読みやすい本です。読むのに時間もそれほどかかりません。それより驚いたのは、この本の内容、かなり正確で、極端な意見(学説とかデマ)が排除されています。中立の立場で書かれているいるなと感じました。 ※私が放射線に関して正確かどうかを判断する基準は、直線しきい値なしモデル(LNTモデル)以外を強く主張しているかどうかです。LNTモデル以外を強く主張しているものを極端な意見と感じてしまいます。  私の購入したものは、2014年の発行でまだ初版でした。あまり売れていないのかもしれません。放射線が気になる人もそうでない人も、多くの人に読んでほしい本です。 【田崎晴明著「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」朝日出版社】  最初に紹介した本の後書きで紹介されていました。若干難しくなりますが、わからないことはわからないと書いていますし、すごく正確だと感じます。私にとっても、大変参考になりました。  最後にこのように書かれていますので引用させてもらいます。 「正しく怖がれ」と言われて恐怖感が消えるようだったら、そんな楽な話はない。 ぼくは「気にする人」たちには「気にする自由」があると信じている。恥ずかしがらず、堂々と、「気になる、心配だ」と言うべきだし、まわりの人も「気にする自由」を認めるべ

核融合科学研究所の重水素実験に対する誤った情報の指摘

  核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の 大型ヘリカル装置 (LHD)で、 重水素ガス (無害)を用いた プラズマ 生成実験が開始されました。普通の水素ガスを用いるより重水素ガスを用いた方が、プラズマの温度が上がると言われていて、数年以内には、装置としての目標である 1億2,000万度 のプラズマ生成を達成すると思います。(現在の水素ガスの実験での達成値は9,400万度)この実験は、将来の 核融合発電 を実現するために必要不可欠なものです。  この実験は 基礎段階の学術的なもの で、 核融合反応を起こす(エネルギーを発生する)ことが目的ではありません が、重水素同士が核融合反応( D-D反応 )が起きる確率はゼロではなく、実験に使った重水素のごく僅かが核融合反応を起こします。その時に放射性物質である 三重水素(トリチウム) と放射線である 中性子 が発生します。トリチウムは回収、中性子はコンクリート壁(もちろん天井もコンクリート)で遮蔽という安全対策をとり、もちろん法令を遵守して実験を行います。また 1億度 と言っても、 周りの壁が溶けることはありません 。  しかし、この実験には反対運動も根強く、広く市民に説明し、地元自治体の同意を得、実験を開始するまでに、約10年を費やしました。それでも、実験を開始する時点で、ネット上に誤った情報が多く流れ、市民の皆様に不安を与えてしまいました。もし、実験に不安に感じておられる方で、偶然この記事を見られたとしたら、最近のネット上の情報の誤りを指摘しますので、ぜひ参考にしてください。 民間の放射線計測システムで 高線量(例えば2.6μSVとか)が観測されたとありますが、重水素実験とは全く関係ありません。 なぜなら、研究所敷地内で高線量は観測されていないからです。研究所敷地内の環境放射線モニタリングシステムのデータを見ていただければ一目瞭然です。実験が開始されても値は変化していません。 https://sewebserv.nifs.ac.jp/map.php  (外部リンク)もしくは  https://sewebserv.nifs.ac.jp/past.php  (外部リンク)(なお、雨が降ると値が少し上昇しますので、ご注意ください。ガンマ線では200、中性子線では20という数字が自然の放射線量の範囲の目安です)