宇宙開発において、国内外のベンチャーが次々と資金を調達し、事業を加速させていることは、皆さんご存じのことと思います。イーロン・マスク氏率いるスペースX社の新型宇宙船が野口宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに送ったことは記憶に新しいことです。
一方、あまり知られてはいませんが、核融合発電の開発においても、ベンチャーによる資金調達と研究開発が活発化しています。すでに中規模の実験装置で高温プラズマの生成に成功した事例もあります。今回はそのようなベンチャーの現状を紹介します。
まず紹介するのは、英国のトカマク・エナジー社です。彼らはST40という球状トカマク装置を開発し、すでに1,500万度のプラズマ生成に成功しています。そして民間として初の1億度(核融合発電のプラズマに必要な条件)達成を目標に実験を行っています。(【追記】2022年3月10日に民間で初の1億度達成を発表しました。)米国でも数社のベンチャー企業が生まれています。コモンウェルス・フュージョン・システムズ社は、マサチューセッツ工科大学(MIT)から独立したベンチャーで、MITで開発された技術を利用し、世界に先駆けて核融合発電を実現しようとしています。現在、MITと共同で、世界初のネットエネルギー発生(入力エネルギーより出力エネルギーが大きいこと)を目指してトカマク装置SPARCの建設に着手しています。ジェネラル・フュージョン社とTAEテクノロジーズ社は、トカマク型とは違った方式の装置で核融合発電の研究開発を行っています。
注目すべきは、いずれのベンチャーにも巨額の投資が集まっており、名だたるIT企業も名を連ねていることです。これまでの核融合の研究開発は、主として国主導で行われてきました。日本も然りです。しかし、これからは官民が協力して核融合発電の早期実現を目指す、そんな段階に入ってきたように思います。
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