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2月, 2010の投稿を表示しています

本の紹介「フュージョン 宇宙のエネルギー」

G.マクラッケン、P.ストット著:フュージョン 宇宙のエネルギー、シュプリンガー・ジャパン(2005)
☆これまで連載で紹介した本は新書なので、千円以下で購入できます。今回紹介する本は、単行本なので、三千円します。ちょっと気楽に買える本ではありませんが、本当はこの本が入門書として一番のお勧めです。
☆話題が広範囲に渡り、物語風に書かれているので、科学読み物としても楽しめます。核融合(フュージョン)研究のことはもちろん、星のこと、さらには低温核融合のことまで、色々なエピソードを交えて書かれています。私は低温核融合に関する書籍を一冊も持っていませんが、この本に書かれていることを唯一の情報源としています。「悲しいエピソード」として。
☆これまでと同様、核融合発電の将来展望についての記述を抜粋します。「・・技術開発研究には粘り強い努力が必要です。・・どれくらい緊急に必要とするかにかかっていますが、開発には大体20年がかかるでしょう。」やはり、「粘り強い努力が必要」というところが、核融合発電実現の鍵だと思いますね。

本の紹介「新・核融合への挑戦ーいよいよ核融合実験炉へ」

狐崎晶雄、吉川庄一著:新・核融合への挑戦、ブルーバックスB1404(2003)
☆前々回に紹介したブルーバックス「核融合への挑戦」の全面改訂版です。前の「核融合への挑戦」では、最初の2章を使ってエネルギーのことを説明し、第3章から核融合の話に入りました。一方、本書は第1章から超高温プラズマの話で始まります。だから、一般市民向けというより、これから核融合の勉強をしたい、または、勉強しようとする人に最適です。前に紹介した2冊と同様、難しい数式もありません。☆最後に「未来への展望」という章があるのですが、もう少し若い人に夢(勇気)を与えるような内容を期待しました。中でも「核融合発電はいつできるのか」という節では、「政治、そして予算が関係することであり・・・科学的な本の内容としてはふさわしくない・・」と書かれています。もう少し楽観的に(期待を込めて)書かれていても良かったかなと思います。☆余談ですが、昨年、中国の核融合研究をしている研究所の所長さんと話す機会がありました。そこで「核融合発電はいつできるのか」という私の問いに所長さんは「15年後」と言い切りました。(短時間の発電実証ですが)日本では30年以内と答えるのが普通なので、本当に驚きました。これが本当なら、中国に先を越されてしまいます。

本の紹介「核融合エネルギー入門」

ジョゼフ・ヴァイス著 本多力訳:核融合エネルギー入門、文庫クセジュ(2004)

☆前の記事で紹介したブルーバックス「核融合への挑戦」が核融合についての入門書の第一であるとすると、第二は、この新書「核融合エネルギー入門」でしょうか。原著はフランス語ですが、実際に核融合に携わっている方が訳されているので、日本語でもとても読みやすくなっています。☆紹介した二つの新書は、一般向けに書かれたものなので、数式や専門的な記号や単位が出てきません。またエネルギー問題と将来のエネルギー開発の展望が、著者の視点から、多くのページを割いて書かれているので、その部分だけでもとても参考になります。☆逆に二つを比べると「核融合エネルギー入門」のほうが、2004年初版なので、情報が最新で、かつ現実的です。現実的と言ったのは、核融合エネルギーの安全性、コスト、技術面の難しさなどが、現状の技術に合わせて書かれています。注意してほしいのは、フランス人向けに書かれた本なので、世界各国の研究状況には触れられていません。当然ですが、日本のことにも。その辺は訳者が後書きでフォローしています。☆本書の最後から一文を紹介します。「(核融合エネルギーの)産業規模での実現は、今世紀前半には行われるだろう。そのころには、われわれの消費による天然資源の枯渇と気候温暖化を強く感じるようになっているはずである。」

本の紹介「核融合への挑戦ー無限のエネルギーを求めて」

吉川庄一著:核融合への挑戦、ブルーバックスB-228 (1974)
☆私が核融合に興味を持ったのは、高校生の時にこの本に出会ったからです。初版は1974年ですから、もう36年も前の本です。
☆さて、当時に何に一番驚いたかというと、第1章に書かれていた「今の需要がそのままふえてゆくとすると、今世紀中に全部石油をつかいつくすことになると考えるのがもっとも妥当であろう。」という一文。そしてこの本の最後の一文、「科学には国境がない。世界のどこの国にしろ、核融合炉の炉心プラズマの製作に成功すれば、人類の最大の悩みであるエネルギー源の問題は解消できるのだ。」です。高校生の私は、石油が無くなるという危機感と、科学の力で人類を救うぞという使命感を持った記憶があります。まあ、それから紆余曲折ありましたが、今核融合の研究をしています。
☆でも今になって思うと、「今世紀中」(つまり20世紀)には石油はなくなりませんでした。(値段は高くなっていますが)「今世紀中」といわれた核融合発電の完成も、まだ少し時間がかかりそうです。ちょっとだまされたという気もしないではありませんが、この本を読んだときの気持ちは失っていません。
☆この本は絶版になっていますが、ネット(Amazonなど)で中古で購入することができます。若い人にもぜひ読んでほしい本です。36年前に書かれたものですが、核融合の入門書として今でも最適だと思います。なお、本書は2003年に全面改訂されて「新・核融合への挑戦」として発刊されています。こちらの紹介は別の機会にしたいと思います。
【追記2010.11.21】
★吉川庄一先生が2010年11月4日に亡くなられました。76歳でした。ご冥福をお祈りいたします。

太陽や星で核融合が起こっていることを明らかにしたのは誰?

☆太陽や星で核融合反応が起こっていることを明らかにしたのは誰で、いつ?東京大学立花ゼミのHPに「戸塚洋二の科学入門」(外部リンク)という興味深い解説記事があります。そこにこの答えが書かれていました。「1939年、アメリカのコーネル大学に所属する当時33歳のハンス・ベーテ博士が1編の論文を発表しました。タイトルは、『星のエネルギー発生について、“Energy Prodaction in Stars"』でした。この論文は太陽を含む恒星のエネルギーが核反応によって作られることを初めて明らかにしたものです。」1939年と言えば約70年前のことです。

☆最初に発表されたのは、たった1ページの短い論文(編集者への手紙)で、星や太陽で起こっている核融合反応や、太陽の中心は2000万度であることが書かれてました。今の教科書には、太陽の中心温度は1500万度と書かれているので、ほとんど同じです。

☆でも実は「太陽のエネルギー源の本当の検証は、最近になってようやく完了しました。」その検証に大きな役割を果たしたのが戸塚先生です。その先生が核融合発電についても言及しています。「エネルギー発生効率の高い核融合、つまり『地上に太陽を作る』ことを推進すべきです。燃料は水素の同位体ですから、地球上に無尽蔵にあります。」この言葉に私も少し勇気をもらいました。
(括弧内はすべて、立花ゼミHP「戸塚洋二の科学入門」より引用させていただきました)

☆本も出版されています。「戸塚教授の『科学入門』E=mc2は美しい!」講談社(2008)です。ぜひ読んでみてください。